《日本激震!私の提言》被災4地域ごとに個性、地元ニーズ理解し再建を--藻谷浩介・日本政策投資銀行参事役
世界一の漁場は復活へ 漁民ニーズに合う港に
--避難生活で仮設住宅の建設を待つのもつらい。他の地方にある空き住宅に移る選択肢があるのでは。
コミュニティを解体すると、本人も不幸だし公共側の後年度の負担もかさむ。特に高齢者は、生活環境が変わると心身の健康を損ないやすい。結果的に都会の親族の元などに移住する人も多いだろうが、地元に残るという選択肢を用意すべきだ。
生産性の高い地域に人を動かしたほうが経済は成長する、とエコノミストは考えがちだ。しかし彼らは、人の移動に伴う社会的コストの増大をモデル計算に組み込んでいない。
日本の社会はこれから、戦後の大規模な人口移動の後年度負担を払う段階に来ている。高度成長期に“金の卵”として東京・大阪・名古屋に流入した若者が加齢し、孤立老人が激増しているのだ。若者を出した側の田舎では、高齢者の多くは子どもと同居しているか、していなくても隣近所に顔なじみ同士の見守りネットワークがあって、生活も通院も互助で支え合っている。
しかし都会で孤立した高齢者は公共が支えるしかない。退院後のケアが期待できないために療養病床から出ていけない高齢者が増え、医療費が激増している。震災が後々、都会で孤立老人を増やすようでは万人にとって不幸だ。
--漁業の問題についてはどう考えるか。
意外に知られていないので驚くのだが、三陸は世界最高の漁場だ。儲かる漁業をやっていたがゆえに、他の漁村地域に比べて人口も多い。