《日本激震!私の提言》被災4地域ごとに個性、地元ニーズ理解し再建を--藻谷浩介・日本政策投資銀行参事役
第一に、石巻以北の三陸地方。第二に、東松島以南の海岸平野の津波被災地区。第三に、東京電力福島第一原子力発電所の影響のある地域。第四に、東北新幹線沿線など内陸部の広大な被災地域、というふうに区分できる。
人命の損害がほとんどないので目立たないが、内陸部にも被災した工場がかなりある。迅速にライフラインを復旧し、これらの再開を支援するのが、経済的には緊急の課題だ。
原発周辺はまだ収束の見通しが立たないので、復興を語る段階にないが、避難地域のみならず、近隣市町村でも経済活動は停止状態で、膨大な損害が発生している。見通しの立たない中、歯を食いしばって雇用を維持している地元企業の悲痛な叫びにどう応えるか。今回は、首都圏に電気を供給する施設が起こした被害だ。受益者である私を含めた東電管区の首都圏住民が、損害を償い、地域再建を全面的に支えるのは当然の責務だということを、忘れてはならない。
三陸の津波被災地域には平地が乏しい。気仙沼や陸前高田のように高台に造成された土地を活用できる町もあるが、当面は谷筋奥の水田を利用するしかない町もある。しかし、いずれにせよ、安易な海岸沿い回帰を避けることが未来のために重要だ。
海岸平野では状況が異なる。海岸部分は数キロメートル浸水したが、仙台市街地は10キロメートルも奥にあって波は来なかった。多くの町に浸水していない広大な農地がある。自治体が定期借地をするなら、被災者のための新居住地として提供してくれる地主もいるだろう。それらを仮設住宅用地とし、数年後に水田に戻すか、そのまま自治体が買収するかを、地主に選択してもらう。買収できた部分を海岸沿いにあった住宅の被災土地と換地し、そこに集落を再建する。
私が言う換地方式ではなく、被災した土地を直接自治体が買い上げ、そのカネで各自が内陸に土地を調達するというのは現実的ではない。東北には先祖代々の土地を大切にしている農家が多いので、個別交渉は進まないうえ、キャッシュの付与はモラルハザードを生む。