ASEANと特別首脳会議・セレモニー以上の成果は? 半世紀の関係となる日本とASEANの将来
アメリカ政府も同様だ。アジア重視を打ち出すバイデン大統領だが、2023年9月にニューデリーで開かれた20カ国地域首脳会議(G20)のあと、ジャカルタで直後に催されたASEAN主催の首脳会議を欠席し、ASEAN議長国インドネシアを失望させた。
その一方で帰途にハノイに立ち寄り、ベトナムのグエン・フー・チョン共産党書記長と会談して両国関係を「包括的戦略的パートナーシップ」へ格上げすることで合意した。
3段階あるベトナムの外交関係でアメリカはこれまで最下位の「包括的」だったが、異例の2段階の格上げで最上位となった。バイデン氏にとっては経済関係以上に、中国と向き合うベトナムの地政学的な重要性を鑑みての訪問だったとみられる。
ASEANの求心力低下
ASEAN全体を相手にするより、個別の国との取引に力をいれるのは日米に限らない。中ロも同様に動いている。
数多くの国際会議を主催し、大国を含めた域外国を呼び込むことで存在感を高めてきたASEANだが、外交や安全保障面で今後求心力が衰える可能性もある。ASEANは「全会一致」の原則を掲げているため、経済的利益の一致を超えた利害調整が難しいからだ。
貿易や投資、企業進出、人材供給といった経済面ではASEANの重要性は今後も増すことがあっても減じることはないだろう。
一方で機構としてのASEANとしては、2008年に法的枠組みとして発効したASEAN憲章でうたう人権保障や法の支配といった原則が加盟国により踏みにじられても、制裁措置や除名といった実効的な措置がとれない無力な状況が続いている。
もう1つの原則「内政不干渉」が壁となっているためだ。クーデターによって政権を奪取したミャンマー国軍との間で結んだ5項目の合意が完全に無視されている現状がその最たる例である。
日本人もASEANの人々もほとんど覚えていないであろう、日本政府の「対ASEAN5原則」なる外交方針があった。安倍晋三首相が2013年1月、第2次政権発足後初の外遊に東南アジアを選び発表した。
福田ドクトリンを継ぐ新たな原則だとして、自由、民主主義、基本的人権、法の支配など普遍的価値の実現をうたったが、地域で浸透した形跡はない。
翌2014年にタイで民選政府を駆逐する軍事クーデターがあっても日本政府は大した批判もしないなど、掲げた原則が空しく響いたこともあり日本政府関係者でさえ口にすることがなくなった。
今回発表される共同ビジョン声明がそうした過去の轍を踏まないことを期待したいが、いかがだろうか。
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