ASEANと特別首脳会議・セレモニー以上の成果は? 半世紀の関係となる日本とASEANの将来

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2022年、日本のGDPは4.23兆ドルになった。2010年に中国に抜かれ、2023年にドイツに抜かれて4位に転落する見込みだ。一方、ASEAN結成メンバー5カ国の2022年のGDP合計は約3兆ドル、10カ国すべてでは約3.6兆ドル。日本の8割ほどとなり、2030年までには日本を追い抜くとみられる。

ASEANは人口6.7億人で世界の8.5%、GDPは3.6%。輸出は8%を占め日本の2倍以上だ。1人当たりのGDPではすでに日本はシンガポールやブルネイに抜かれている。

各国の首都や大都市を歩いていると、日本の経済的影響力が低下する一方で、中国や韓国の存在感が増していることを実感する。

現実に追いつかない日本人の認識

ベトナムの複数の超高層ビルは韓国資本、カンボジアやラオスの政府関係施設やスタジアムは中国の援助、マニラの目抜き通りには「Korean Town」のサインボードが軒を連ねる。巨大な看板にはK-popスターが起用され、観光地で聞こえるのは中国語か韓国語だ。

日本勢はインフラ整備や自動車などの製造業でこそ一定の存在感を示しているが、中国の援助で高速鉄道の開業にこぎつけたインドネシアや韓国・サムスン電子が経済の浮沈を握るベトナムなどを例に挙げるまでもなく、プレゼンスの相対的な低下は否定のしようがない。

かつての経済強国ニッポンはこの地域でいま、年金生活になってもなお条件の良い援助を気前よく与えてくれる「足長おじさん」的な存在と言えば言いすぎだろうか。ODAが日本の経済活動やプレゼンスにどれほど結びついているか、中韓の台頭をみるにつけ、検証の必要性を私は感じている。

シンガポールはもちろん、バンコクやジャカルタ、マニラのモールで外食をすれば、円安もあって、たいていは日本より高くつく。かつては日本人の旅行先だったこの地域の人々にとって、最近の日本は手頃な旅行先となり、訪問者数は逆転する勢いだ。

ところが東南アジアを近年訪れたことのない日本人の多くはいまだに「後進国」のイメージにとらわれているようにみえる。この認識のギャップが相互理解を阻む大きな壁になっていると感じる。

今回の特別首脳会議を前に東南アジアを歴訪した岸田文雄首相は2023年11月4日、フィリピン国会で演説した。

冒頭、1977年に福田赳夫首相(当時)がマニラで表明した「福田ドクトリン」(東南アジア外交3原則)に言及し、対等なパートナーとして「心と心のふれ合う」信頼関係構築をめざすとしたドクトリンの精神を引き継ぐことがわれわれの責任だと強調した。

続いて日本政府が現在打ち出している「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を紹介し、「自由」と「法の支配」を守り抜くと宣言した。

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