NHKが「テキストニュース」を次々に閉鎖する懸念 「放送と同様」でネット受信料を取るつもり?

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一方、そもそもNHKを見ない若い世代は「NHKプラス」に何の価値も感じない。大河や朝ドラを見る若い世代はごくごくわずか。ニュースはネットで無料で見るもの。地震が起きてもテレビはつけずにスマホで震源地を確認する。「推し」が出る音楽番組やドラマなら見てくれる可能性はあるだろうが、仮にそのためにネット受信料契約をしてくれたとしても、その番組が終われば即解約されるだろう。「NHKプラス」はそれ単独ではサブスクサービスでしかない。Netflixなどと同じ扱いになり、移ろう顧客しか獲得できないだろう。

サブスクサービスとの差別化

確かにTVerは伸びている。いまや月間3000万UB(ユニークブラウザー)を誇るサービスでもっと伸びるだろう。だが、無料だからだ。面白いドラマやバラエティが、広告付きで無料で見られるから伸びている。一方、民放テレビ局が運営するサブスクは苦戦している。Huluは300万人程度から伸び悩み、TBSとテレビ東京、WOWOWが組んだParaviはU-NEXTに統合された。テレビ番組を有料で見てもらうのはハードルが高い。

ネットでは特定のユーザーにサービスをターゲティングする必要がある。実はNHKはLINEでニュースを配信してきた。若い女性をターゲットとし、それに合わせたニュースを選んで掲載していたら、伸びてきた。日々、データと取っ組み合い試行錯誤した成果だと聞く。ところが今、LINEに出すニュースはテレビの「ニュース7」に準じるよう指示が出ているそうだ。「放送と同様」にするためだ。これには笑った。ネットでの読者を馬鹿にした指示だ。そしてユーザーより局内の方しか見ていないことが露呈する話。こんな指示を平気で出すメディアが、ネットで受信料など取れるはずがない。

もちろん、LINEニュースが読まれていても有料になったら読者は離れるだろう。だからそれとは別にあらゆる接点作りをするべきなのだ。NHKにお金は払いたくないけど、あそこのニュースは読んでいるし、こっちから得る情報は欠かせない。そんなサービスを積み重ねてようやく月数百円くらいなら払ってくれる可能性が出てくる。「NHKプラス」に加えどんな接点作りができるか――。ネット受信料の道はそうやって切り開くしかない。

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