「膝をたたくだけ」医師が勧める簡単すぎる健康法 最近注目の「若返りホルモン」が期待できる

拡大
縮小

骨芽細胞から分泌されるオステオカルシンには、さまざまな健康効果があることがわかってきました。ここでは全部を紹介できませんので、一部をかいつまんで紹介しましょう。

例えば、糖尿病の予防です。

オステオカルシンは、すい臓の働きを活性化し、インスリンの分泌を高めるといわれています。

糖尿病にはⅠ型とⅡ型があり、Ⅰ型はすい臓からインスリンをほとんど分泌できないタイプで、Ⅱ型はインスリンが分泌できなくなったり、働きが悪くなったりするタイプです。生活習慣病といわれるのはⅡ型で、オステオカルシンの効果が期待できるのもⅡ型になります。

骨を強くしてオステオカルシンがよく分泌されるようになると、インスリンの分泌もよくなるため、血糖値の上昇を抑えることができます。

また、オステオカルシンには、脳の神経細胞を活性化する働きがあることがわかってきました。オステオカルシンを分泌できないマウスは、神経細胞の働きを高める神経伝達物質の分泌が低下し、逆に機能を抑制するアミノ酸が増えたという報告があります。

そのためオステオカルシンは、認知症予防にも効果があるのではないかと期待されています。

それからオステオカルシンの分泌量が増えると、筋肉量が増えることもわかってきました。

老化マウスにオステオカルシンを注射で補うと、なんと骨格筋量が増え、運動機能が回復したという報告もあります。また、その実験では、筋肉量を増やすために必要なたんぱく質の合成能力も上がったといわれています。

一つの成功体験が次の習慣につながる

誤解のないようにお伝えしておくのですが、「ひざたたき」さえやっていれば万事オーケーというわけではありません。筋トレやストレッチなどの運動ができるのであれば、ぜひ並行して続けていただきたいと思います。

「ひざたたき」のとてもいいところは、これまで運動習慣がなかったり、どんな健康法も続かなかった人に「続ける習慣」が一つできるところです。

『ひざたたき 世界一かんたんな健康法』(アスコム)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

どんなにかんたんなことでも、何かを続けられたり、習慣化できたりしたことは、確かな成功体験になります。その成功体験から、「次はアレをやってみよう」「今度はコレもできるはず」と、どんどん意識が広がっていく可能性はおおいにあります。

また、「ひざたたき」をやったら、そのついでに「ちょっと体操でもしようかな」「軽くストレッチもやっておこうかな」と他の運動のきっかけになることもあります。

繰り返しになりますが、継続こそが最高の健康法です。

どんな健康法よりも始めやすく続けやすい「ひざたたき」を入り口にして、ぜひ、もっと好きな運動や楽しい健康習慣を見つけていただきたいと思います。

中村 光伸 光伸メディカルクリニック院長

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

なかむら こうしん / Koshin Nakamura

医学博士。整形外科医の知見から、注目を集める若返りホルモン「オステオカルシン」の研究を進め、骨の強化と全身の機能回復を両立する「ひざたたき」を考案。整形外科から美容外科、美容皮膚科、リハビリテーション科まで幅広く診療し、若々しい体を取り戻す「リバースエイジング」の専門家として「ソレダメ!」(テレビ東京)、『anan』『VOCE』『美ST』などメディア出演多数。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT