実は、寺本さんら専門医はLDLコレステロール値が高めの人に、この検査を受けることを勧めている。
「頸動脈は首にある動脈で、動脈のなかで最も体の表面にあります。しかも太い血管なので、超音波検査を行えば動脈硬化が起こっているかが一目でわかります。頸動脈に問題があれば、体中に動脈硬化が起こっている可能性が高いです」
動脈硬化を目で知る効果は大きい。寺本さんは「血管の状態を見てショックを受けた患者さんは、これから注意しようと思ってくれます」と話す。頸動脈エコーは健康保険で受けることが可能だ。
LDLコレステロール値が高いということは、徐々に動脈硬化が始まっているという証拠。狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの病気の発症リスクが高まり、30年ぐらい後に発症……という経過をたどる。
日本人男性がこれらの病気を発症する年齢は、ほぼ70代。逆算すると40歳前後でコレステロールの値の高さを指摘されたら、「まだ大丈夫」ではなく、今から対策を講じるべきだろう。
なお、女性がこれらの病気を発症するのは男性より遅く、80代くらい。これは女性ホルモンのエストロゲンがLDLコレステロールの生成を抑えたり、余分なLDLコレステロールを肝臓に戻したりする作用があるため。
エストロゲンの分泌がほぼなくなる閉経以降は、LDLコレステロール値は上がりやすいので、そのあたりから注意が必要になる。
スタチンがLDL値を下げる理由
食事指導でも数値が改善しない場合は、「スタチン」というコレステロール値を下げる薬を服用する。
なぜスタチンがLDLコレステロールを減らすのか。その仕組みについて、簡単に説明しよう。
スタチンは肝臓でコレステロールを生成するのを阻害する薬だ。その結果、肝臓にあるコレステロールの量が減る。たが、肝臓にはコレステロールの量を一定に保つメカニズムが備わっているため、肝細胞の表面にあるLDL受容体を増やして、血液中にあるLDLコレステロールを取り込む。
その結果、血液中にあるLDLコレステロールが減る、というわけだ。
このLDL受容体は1974年に発見され、発見者のアメリカの遺伝学者マイケル・ブラウンとヨセフ・ゴールドスタイン博士は、1985年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら