灘→東大からの「脱落エリート」彼らの数奇な人生 なぜ年収・安定より「おもろい」を優先するのか

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実際に彼の短歌集は、紀伊國屋新宿店1店舗で1000部近い驚異的な売り上げを達成したという。囲碁ブームを作った『ヒカルの碁』や、競技かるたの人口を増やした『ちはやふる』のような現象を、彼はいま、1人で作っているのである。

この青松氏の思考・感性は、彼のYouTube活動にも通ずる「人の心」への関心が大きい。同作品には恋愛の話も多く収録されているが、「恋愛という難題には情報量が多い。それがおもろいんです」と彼は言う。

しかし、心中は複雑だ。学費を払ってくれている両親や医師として育てようとしている大学の先生方に筋を通せておらず、この活動を続けていいのかという迷いがあるようだ。

好きなことに社会性を持たせる

ここで筆者は、六代目三遊亭円楽氏が、伊集院光氏に伝えた言葉を思い出していた。

「時間を忘れるくらい好きなことに、少しの社会性を持たせれば、それで食える」

彼ら2人の話を聞いていると、どちらも社会の尺度では測れないことを見つけて打ち込んでいるように思えるが、そこに社会性が備わっていることを見逃してはならない。

彼らにとっての「おもろい」を追求することは、自分たちだけではなく、他の人にとってもおもろいこと……周囲の人間に影響を与え、連鎖し、ひいては社会への貢献にもつながることを目指しているのだとわかった。

ゴールドマン・サックスに16年勤務して退職。

東大の医学部に在籍しながら3年連続で留年。

非合理にも見える彼らの選択は、「問題を解くこと」、そして「社会性を持つこと」という「おもろい」を求める姿勢が関係しているのだと筆者は感じた。

彼らはこれから自身の創作活動を通して、何を目指していくのだろうか?

筆者は少しでも彼らの考え方に近づくため、さっそく書店で彼らの書いた2冊の本を手にして会計まで向かった。

濱井 正吾 教育系ライター

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はまい しょうご / Shogo Hamai

兵庫県出身、1990年11月11日生まれ。「9浪はまい」のニックネームでTwitterやYoutube、テレビ出演などを行っている。大阪産業大学経済学部経済学科に入学後、龍谷大学経済学部現代経済学科に編入学し、卒業。 高校時代にいじめを受けたことから、いじめっ子を社会的に偉くなって見返したいと思い、在学中から仮面浪人として受験勉強を4年間続ける。大学卒業後、証券会社に契約社員として就職したが10日で自主退職、同月中に配置薬会社に再就職。昼は会社、夜は予備校という生活に。同社退職後は受験勉強に専念し、9浪で早稲田大学に一般受験で合格し、2018年に教育学部国語国文学科入学、2022年卒業。現在はカルペ・ディエム所属。

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