灘→東大からの「脱落エリート」彼らの数奇な人生 なぜ年収・安定より「おもろい」を優先するのか

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後日、筆者が実際にYouTubeで田内氏について検索していると、自民党の西田昌司参議院議員の動画に行き着いた。彼は、岸田総理に今すぐ読ませたい本として、田内氏の『きみのお金は誰のため』を挙げていた。

情報量が多い「人間」の面白さを追求

一方、青松氏も今年8月にナナロク社より初の短歌集『4』を出版している。

実は現在、学生を中心にエンタメの世界で活躍する彼が、YouTuberになる前から熱中していたのが芸術性の高い短歌であった。

短歌に熱中するのも「ことば」を大事に扱い、こだわる特性があるためだろう。彼がYouTube活動を始めたのも、「マイナーな短歌をやっているからこそ、今度はその反対の一番チャラくて有名になることをやってみよう」と思ったことがきっかけであった。

受験という「ゲーム」を突き詰めてきた現在の彼の行動原理は、そこから一歩発展して「他のゲーマーがやっていないことをしたい」というクリエーター精神である。

「高尚なジャンルとされ、多くの人がアートとして取り組んでいる短歌に、土足で乗り込んでいくのが面白い」と語る青松氏は「短歌のルールのギリギリ外側にあるものを使っている」と自身の作品について語るが、その珍しいことばさえも違和感なく歌全体に溶け込み調和させる役割を担っており、爽快な読後感へ導くのである。

「火花放電 僕に子供が生まれてもネーミング・ライツは買わなくていい」
「十年後の僕はロレックスをはずしてつまらないことで笑う 笑え」
短歌集『4』より

「ブームに乗るんじゃなくて、ブームを作るっておもろいですね」と田内氏は目を細める。

「ネーミング・ライツ」「ロレックス」といった伝統的な短歌に似合わない固有名詞が、若い人たちの興味を引く。「YouTubeが流行っているからYouTuberになろう」は簡単だが、彼はそれにとどまらず、マイナー分野の人口を増やすための仕掛けを考えているのだ。彼のファンである若年層が想像しやすい言葉を使った作品を届けることで、短歌を若者にとって身近な存在にしようとしたのである。

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