灘→東大からの「脱落エリート」彼らの数奇な人生 なぜ年収・安定より「おもろい」を優先するのか
彼からは、次のような言葉をかけられたそうだ。
「田内さんの考えをわかりやすく言語化して本を書いたらいい。内容が正しければ、安倍さんにだって伝わりますよ」
安倍さんとは、当時の総理大臣、安倍晋三。その話を聞いて、「おもろい」と感じた田内氏は、GSを躊躇なく辞めて、佐渡島氏のもとで本を書く修業をする。
そうして完成した経済書『お金のむこうに人がいる』は、実際に安倍氏の目に留まり、政治家の勉強会などに頻繁に講師として呼ばれるようになったそうだ。
灘→東大→YouTuber…そして作家になった2人
こうしてお伝えしてきた2人の事例は、世間の想像する「エリート」とは異なる。医師へと続く道をあえて踏み外そうとしている25歳と、「世界最強の投資銀行」を辞めた45歳。親子ほど歳の離れた2人はYouTubeで意気投合し、現在、何の因果かともに作家業に打ち込んでいる。
そこには、大勢の人が求める安定という道を進むよりも、「おもろい」難題を見つけて解決を目指す灘出身者の共通点が見出せる。
しかし、話を聞き進めていくと、どうやら彼らの言う「おもろい」とは自分たちの満足を求めることだけではなく、より深い意図があった。
10月に上梓された小説『きみのお金は誰のため:ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』には、田内氏の思いが詰まっている。
この小説を「人との繋がりが大事ということを伝えたい作品」だと評する青松氏に、田内氏もうなずく。
年金問題にしても、物価上昇の問題にしても、お金の問題に見える。解決するためには投資でお金を増やそうと考える。しかし、お金だけ見ていると失敗してしまうと田内氏は言う。
「問題解決の糸口は、お金自体ではなく、お金によって人々がどのように繋がっているか。それがわかれば、経済は難しくないし、何をすべきか見えてくるんです」
『きみのお金は誰のため』を完成させるまでに、修業も含めて4000時間以上費やしたそうだが、「そういう時間は、一番おもろいじゃないですか」という田内氏は人生を楽しんでいるように見えた。「今度は、岸田総理に読んでもらいたいですね」と彼は笑って言った。
YouTuberをしているのも、自身の書いた本や自身の考えをより広めて注目を集めるためである。
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