孫泰蔵「未来への準備をやめよ」と断言する理由 AI時代こそ大切になる「コンサマトリーな時間」

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:おっしゃるとおりで、今のエピソードを取材で話すと、たいてい「ヤフーとの出会いが人生を変えた」という見出しをつけられちゃうのですが、本当はその手前の2年くらいの悶々期が、僕の中でエネルギーをためる準備期だったのだと思います。

ご存じのとおり、僕の兄は孫正義で、九州男児の父からはいろんなプレッシャーを受けてきて、僕なりに鬱屈とした思いを抱えていました。探究して出会った古代の教育改革者たちの人生を紐解いても、筆舌に尽くし難い悲劇的な経験をしている人は少なくないんです。だからこそ「こんなこと起きてたまるか!」と爆発するエネルギーが生まれて、時代を塗り替えていく。その繰り返しで人類はここまで進んできたんじゃないかと思います。

教育においても、答えをすぐに与えずに、興味のピークが最高潮になったところで「答えは教えない」と去っていくほうが、モヤモヤが最高潮になっていい。きっとそこから、自分で調べたり、何か作ってみたりする人が現れるでしょう。僕は学生向けの講演ではいつもそうしています。

「勉強するのは何のため?」ループから脱出せよ

佐宗:非常に納得できます。答えを鵜呑みにすることに慣れてしまうと、時代が間違った方向に進んだときにも気づきにくくなってしまいますからね。

『じぶん時間を生きる TRANSITION』(あさま社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

:まさにそこが核心です。

佐宗:泰蔵さんが「現行の学校教育に興味がない」と言った理由がさらに理解できた気がします。

:「勉強するのは何のため?」「いい学校に入るため」「じゃ、いい学校に入るのは何のため?」「いい会社に入るため」「いい会社に入るのは何のため?「いい老後を迎えるため」と、永遠のループに入っていくのは不毛です。ずっと不安にむしばまれて生きないといけないですから。

佐宗:たしかに、常に満たされない状態が続きますよね。

:社会に出るための準備なんてクソくらえだ!と言いたいですね。

(構成:宮本 恵理子)

*この記事の前編孫泰蔵「将来のため勉強せよと教えるのは問題」

孫 泰蔵 Mistletoe Founder

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そん たいぞう / Taizo Son

日本の連続起業家、ベンチャー投資家。大学在学中から一貫してインターネットビジネスに従事。その後2009年に「アジア版シリコンバレーと言えるようなスタートアップ生態系をつくる」という大志を掲げ、ベンチャー投資活動やスタートアップの成長支援事業を開始。そして2013年、単なる出資に留まらない総合的なスタートアップ支援に加え、未来に直面する世界の大きな課題を解決するための有志によるコミュニティMistletoeを設立。

社会に大きなインパクトを与えるスタートアップを育てることをミッションとしている。

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佐宗 邦威 多摩美術大学特任准教授、戦略デザインファーム「BIOTOPE」代表

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さそう くにたけ / Kunitake Saso

東京大学法学部卒。イリノイ工科大学デザイン学科(Master of Design Methods)修士課程修了。P&Gにて、ファブリーズ、レノアなどのヒット商品のマーケティングを手がけたのち、ジレットのブランドマネージャーを務めた。ヒューマンバリュー社を経て、ソニークリエイティブセンター全社の新規事業創出プログラム(Sony Seed Acceleration Program)の立ち上げなどに携わったのち、独立。『直感と論理をつなぐ思考法』『模倣と創造 13歳からのクリエイティブの教科書』著者。

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