好決算に沸く生保、好環境の陰に潜む死角 超低金利が業界に及ぼすマイナス影響とは

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円安や株、債券など保有資産の価格上昇を背後で支えているのが、歴史的水準にある超低金利だ。ところが、格付け会社ムーディーズの久保英次アナリストは、「今の超低金利が続くと、中長期的には生命保険会社のファンダメンタルな収益力に黄信号が灯る」と指摘する。

人口減や少子高齢化といった人口動態の変化で、保険ニーズは死亡保障から貯蓄や医療分野へのシフトがみられる。ところが現在のような金利水準が長引けば、「顧客にとって魅力のある貯蓄性保険を売りづらくなる。収益性は低いものの、安定的な利益の源泉となる貯蓄性商品の保有契約が細るおそれがある」(久保氏)。

保険会社は保険料を将来の保険金支払いに備えて責任準備金として積み立てるが、この計算に用いる標準利率は金融庁が年4回改定する。保険会社が契約者に約束する予定利率はこの標準利率を参考に決める。実際、国債利回りの低下によって、この7月から一時払い終身保険の標準利率は1.0%から0.75%に切り下がる。新規契約の保険料を値上げする会社も出てきそうだ。

一方で、医療保険を中心とした第三分野は、金利動向から受ける影響は小さく、かつ貯蓄性商品に比べて収益性も高い。ところが、需要の増加が見込まれる成長分野だけに、外資系や損保系生保もこぞって力を入れており、保障内容や価格、販売の現場で各社の競争が一段と激化するおそれがある。

超低金利で資産運用が困難に

超低金利は、保険販売と並ぶ業務の柱である資産運用にも影を落としている。長期にわたり保険金支払いを約束する生保では、長期国債など円建ての金利資産への投資が運用の中核となる。

ところがこの金利水準で国債を買い進めることは、収益性を犠牲にすることになる。とはいえ、外債や国債以上の利回りを確保するためのクレジット投資、あるいは株や海外インフラ、新興国など成長分野への投資を増やすには、リスクを取るための財務体力や運用ノウハウ、リスク管理など高度な運用力が求められる。

商品開発やマーケティング、販売力強化や新しい販売チャネルの獲得、そして資産運用と、各社の競争は今まで以上の総力戦となりそうだ。

水落 隆博 東洋経済 記者

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みずおち たかひろ / Takahiro Mizuochi

地銀、ノンバンク、リース業界などを担当

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