がん治療に進展?新薬がもたらす延命効果 膨らむ「チェックポイント阻害薬」への期待

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縮小

だがもっと変異が多いがんもある。それも「ミスマッチ修復」の欠損を伴う変異だ。この欠損があると、細胞分裂の際にDNAに異常が起きても修復がうまくいかない。そして突然変異が積み重なっていってしまうのだ。

打つ手のなかった腫瘍が縮小

大腸がんの5%を占める「リンチ症候群」の患者では、このミスマッチ修復の欠損がみられる。リンチ症候群は遺伝性で、がん、特に大腸がんを発症するリスクが高くなる。その一方で遺伝性ではない大腸がんの約10%にもみられるし、前立腺がんやすい臓がんなどほかの多くのがんでも数%にはみられるはずだとディアス准教授は言う。

この仮説を証明するため、研究チームは小規模な研究を行った。他の治療の効果が見込めなくなった進行がんの患者を対象にキートルーダを投与してみたのだ。

ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに載った論文によれば、この欠損のある10人の大腸がん患者のうち4人では腫瘍がかなり縮小した。だが、欠損のない患者ではそうした効果はみられなかった。また、大腸以外のがんにかかっていて欠損のある患者7人のうち5人(71%)でも、腫瘍の縮小がみられた。

この欠損がある直腸がん患者の生存期間はない患者より長かった。ただし、どれほどの期間かはまだ分かっていない。というのも多くの人が今も生存しているからだ。

DNAシーケンシングにより、この欠損のある人にできた腫瘍には平均して1782もの変異があった(ない人ではたった73個)。

(写真:Jessica Kourkounis/The New York Times)

研究に参加した患者のひとり、ステファニー・ジョーホーはリンチ症候群だ。母は44歳で大腸がんになり、6年後には子宮がんになった。ジョーホーはもっと運が悪く、大腸がんだと診断されたのはニューヨーク大学を卒業してすぐのことだった。

2度の手術に2種類の化学療法を受けたが、がんの進行は止められなかった。万策尽きて、大量の麻薬がないとひどい痛みに襲われるようになった。ジョーホーはニューヨークでの仕事をやめてフィラデルフィア近郊の実家に戻ったが、ほとんどベッドに横たわったままだった。

ところがキートルーダの投与を受け始めると、腫瘍は小さくなり始めた。痛みもぐっと楽になり、麻薬を使わなくてもよくなった。その後、禁断症状の治療のために短期間、入院することになったけれど。

「こんなに調子がいいのは4年ぶり」とジョーホー(25)は言う。

(執筆:Andrew Pollack記者、翻訳:村井裕美)

©  2015 New York Times News Service
 

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