エネルギー安全保障のために再生可能エネルギーの育成を


 また、単純に発電能力を増大させれば問題が解決するわけではない。多様な発電業者の参入は、電力供給の不安定化リスクを増大させる。そのうえ家庭用ソーラーの普及が進めば、逆潮流による系統電力不安定化の問題が必ず現れる。これをカバーするのが、蓄電池やITを活用し電力需給を“見える化”してコントロールする「スマートグリッド」だが、家庭用などの設備はまだしも、発電事業者を含む供給側についてはここ1~2年で実証実験が始まったばかり。実用化までにどのくらい時間がかかるのか、まだわからない。

全量買い取り制度にしても、現状では地域管轄の大手電力会社が比較的高額で買い取り、価格差は需要者に広く転嫁されるが、この仕組みでいいのか。過去、再生可能エネルギーの市場が育たなかったのは電力大手が抵抗勢力となっていたからといわれる。今は表向き抵抗できる状況ではないが。

そこで必要となるのが、中立の存在である卸電力取引所の活用だ。電力自由化を旗印に2003年に設立されたものの、加盟はいまだに54社にすぎず、それも大手電力、大手ガス会社、商社などの大資本ばかりが目立つ。取引高は全電力需要量のほんの1%にすぎない。一方、北欧では4カ国を統合した市場があり、取引量の70%を扱う。こうした仕組みをどうやって作るか。

発送電分離も取りざたされているが、東電のみの懲罰的な分離では意味がない。「競合のない送電部分は公共インフラとして自由に使えるようにし、競争によってコストダウンや品質の向上が望める発電部分は自由化すべき」と、富士通総研経済研究所主任研究員の高橋洋氏は言う。

東西の周波数差問題が残るが、高橋氏は、現在3カ所、日量100万キロワットの周波数変換所の能力を30倍程度に増強すれば、十分実用に堪え、コストも数百億円程度で済むと見る。周波数の東西統一は、タービンなど既存設備の置き換えに伴う膨大なコストや、すでに現地の周波数を前提に造られている電気機器の破損やそれによる事故のリスクを抱え込むことになり、現実的ではない。

全産業の基盤となる電力政策に拙速は禁物。速やかに、しかし周到に、高い視点からの施策が望まれる。

(シニアライター:小長洋子 =週刊東洋経済2011年6月18日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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