エネルギー安全保障のために再生可能エネルギーの育成を

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 再生可能エネルギーの最大の問題点は、発電量の不安定さだ。日が陰れば太陽光は能力が低下するし、風が吹かなければ風力発電は機能しない。木材火力が中心のバイオマスも、安定して間伐材や製材くずを入手できる立地は限られる。自然が相手であることによる制約は大きい。

導入にも障害が多い。たとえば風力の場合、低周波騒音や鳥への影響問題もあって、環境アセスメントに最低でも1年かかる。地元のコンセンサスを得る必要もあり、企画から完成まで3年はかかるといわれる。景観や雇用という点で地元にメリットが少なく、協力を得るのはなかなか難しい。また、電力の買い取り価格が10円/キロワット時程度と安く、コスト回収が至難であることも問題だ。

特にここ1~2年、「制度面での問題のため」(伊藤忠テクノソリューションズ科学システム事業部新エネルギー・インフラ事業推進部長の福田寿氏)新規開発が冷え込んだ。同社は気象予測システムを活用して風力発電や太陽光発電のコンサルや発電量予測などを行っているが、大きな問題となっているのは「風車への改正建築基準法適用で建築確認に時間がかかるようになったことと、自主的に行われている環境アセスメントに義務化の動きがあること」だ。項目・内容の増加で自主的アセスメントが無効とされる可能性もあり、経費、時間ともに二重負担となる。

分散電源に対応するインフラを

加えて、今国会を通過すれば今年度から施行となる再生可能エネルギーの全量買い取り制度を見込んで、風車建設費用の3分の1~2分の1あった補助金が交付されなくなった。このため一昨年ごろから複数のプロジェクトがストップしている。

だが、こうした障害を取り除けば風力発電の可能性は大きい。4月に発表された環境省の「再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査」によれば、事業用風力発電の潜在能力は陸上・洋上合計で19億キロワット。家庭用を除く太陽光発電の1億5000万キロワットを大きく凌駕する。ただ洋上は、水深20メートルまでという条件が日本近海では難しい。期待される浮体の利用も世界でまだ例がなく、洋上の風力データ収集や建設方法をはじめとする技術面の確立など要件が多い。実用化研究は始まったばかりで、今後5年以上の時間が必要だ。

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