海外の先進企業はなぜ哲学者を雇い始めたのか? 「哲学では飯は食えない」はもはや過去のこと

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例えばドイツには「プロイェクト・フィロゾフィー」、オランダには「ニュー・トリビュウム」といった哲学コンサルティングの企業や団体があります。これらの組織は議論するスキルを向上させるコーチングやセミナーを実施したり、会議のファシリテート(対話の進行)をしてより本質的な議論に深まるように導く支援をしたりしているようです。

日本企業に比して、欧米企業は自分たちでプラットフォームをつくろうとするだけではなく、ルールさえもつくろうとする傾向がしばしば指摘されます。

世論など、社会が問題をどのように捉えているかを把握しつつ、それに応えるかたちで法制度の整備に働きかけたり、「自分たちは何をよしとするのか」を明確にして打ち出したりしていく姿勢が見られます。

ルールメーカーを目指す欧米企業

GAFAが企業内哲学者を雇うのは、こうした戦略的な意図もあってのことでしょう。柔道などの国際競技でルールが変わってしまえば、負け知らずだった選手も負けてしまうことがあるように、ビジネスでもルールメーカーこそが競争優位に立つことができます。

とはいえ、自分たちのルールを社会に押しつけようとしても、人々はついてきてくれません。自社がどんな理想の社会を思い描くのかというビジョンと、それに説得力をもたせるための理由が必要です。

セールスフォースやボーイング、ロレアル、Airbnbなど欧米企業には、「CEO(Chief Ethics Officer=最高倫理責任者)」やそれに類する役職さえ設置されているところもあります。哲学や倫理が自社の事業展開に積極的に活用されているのです。

一方、日本企業は炎上の回避やコンプライアンス(法令遵守)には気をつかいますが、新しいルールメイキングには消極的だといわれます。

例えば、新興技術やイノベーションに関連してまだ法制度が整っていないグレーな部分があれば、「お上」に早く法制度を整備してほしいと要求するなど、誰かがルールを決めてくれるのを待つ姿勢になりがちです。

欧米企業が法的にグレーなら、ルールメイキングに結びつく働きかけをしたり、法整備に先んじて思い切った社会実験をしたりするのとは対照的です。

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