海外の先進企業はなぜ哲学者を雇い始めたのか? 「哲学では飯は食えない」はもはや過去のこと

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例えば博士号をもち、アスコルという企業を設立したA.タガートは、「どうすれば私はもっと成功できるのか」と考える企業幹部に対し、「なぜ成功しなければならないのか」と問い返すような哲学的なコーチングのプログラムを提供してきたそうです。

そうした問いかけを通じて暗黙裡に抱えてしまっている先入観が再考されたり、「そもそも成功とは何か」といったより深い思考へ導かれたりするというわけです。

2022年に私も参加したセミナーは、「欠乏感(本当は十分に足りているにもかかわらず、まだ足りないと信じたり感じたりするマインドセット)の克服」というテーマで実施されました。

タガートは「何が欠乏感を生み出すのか」という問いからスタートし、「自分自身についての知識が欠如しているからだ」と答えます。

欠乏感の克服に向けて

彼によれば、欠乏感はお金、時間、課題の達成などに関して「まだ十分でない」と感じるときに生じるが、どうしたらもっとお金や時間を得られるかといったふうに、対象に意識が向けられてしまいます。

しかし、「誰にとって十分でないのか」を問い、自分が自分についてわかっていれば、足りないものがあると信じたり感じたりしないだろうと言います。欠乏感の克服に向けて、どのように欠乏を感じるか、欠乏感を抱くとき何者になろうとしているのかについて内省を促すとともに、そうした欠乏感がないとしたとき、「私は何者であるか」を問いかけます。

彼の事業活動は個々人を対象に哲学的に問いを深め、自己内省を促す特徴をもっているといえるでしょう。

アメリカにはタガートのような活動をする「哲学プラクティショナー」が数多くいて、「アメリカ哲学プラクティショナー協会」という組織がその認定を行っています。

こうした哲学コンサルティングの広がりは、欧州でも加速しています。もともとアメリカに先んじて、1981年、ドイツの哲学者G.アーヘンバッハが自身のクリニックで「哲学カウンセリング」を開業したのですが、そうした潮流が発展し、今日ではビジネスシーンでの哲学コンサルティングが広がっています。

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