伊藤園「ボトル缶コーヒー」値上げしても好調の訳 ボスやジョージアなど強豪商品を上回る勢い

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伊藤園はさらに、長年培ってきた飲料作りのノウハウをコーヒー飲料作りに注いでいる。

カフェで提供されるコーヒーと違い、飲料商品は長期保存させる必要がある。そのため、殺菌工程を経ても、温かくても冷たくても、美味しさを保てる技術が求められる。その点、伊藤園は緑茶飲料作りにおいて、茶葉を摘んでからの迅速な製造工程を確立している。

相澤氏は、「緑茶やコーヒーなどの無糖飲料はごまかしがきかない。お茶を長年手がけてきた伊藤園の知識が、コーヒー飲料作りにも生きている」と話す。

こういった伊藤園とタリーズの強みを持ち寄って開発した商品が、味への感度が高くなった消費者に響いたというわけだ。

課題は消費者との「接点」の拡大

好調を持続するタリーズ飲料だが、この先も販売数量を伸ばしていけるのかというと、そうとは限らない。ただでさえ、ライバルがひしめくコーヒー飲料市場での競争は激しい。

コーヒー飲料の主要な販路は自販機だ。ところが、約76万台の自販機を持つコカ・コーラや約37万台のサントリー食品インターナショナルに比べ、伊藤園は約14万台でしかない(自販機台数は飲料総研調べ)。

消費者とのタッチポイントが少ないため、商品に対する認知を広げる機会が他社と比べて少ない。

タリーズのボトル缶コーヒーの主要販路はコンビニだが、近年伊藤園が注力するのはスーパーやドラッグストアなどの量販店だ。バリスタズブラックの量販店導入率は2019年の約30%から、2022年には約56%まで急上昇した。伊藤園は今後も、プロモーションの強化や店頭陳列の拡張を図り、さらなる販売拡大を目指す。

競合に比べ自販機を通じた消費者との接触が限られる一方、タリーズ飲料にはカフェのファンが興味を持ちやすいという利点もある。これまで缶コーヒーになじみのなかった若年層の取り込みや商品認知度の向上が、一段成長のカギとなる。

田口 遥 東洋経済 記者

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たぐち はるか / Haruka Taguchi

飲料・食品業界を担当。岩手県花巻市出身。上智大学外国語学部フランス語学科卒業、京都大学大学院教育学研究科修了。教育格差や社会保障に関心。映画とお酒が好き。

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