貧困ドラマで「趣里」と三浦貴大が主役演じる妙味 編集者とライターを軸に連載を連続ドラマ化

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勤務先でのセクハラやパワハラに加えて、家庭内で虐待やDVを受けてきた被害者女性を熱演する宮澤エマ(画像:WOWOW)

そもそも骨太のストーリーが仕上がっているのは、ノンフィクションライターの中村淳彦氏と東洋経済新報社の編集者である高部知子氏が丹念に取材を続けている記事を元にドラマ化されたことが大きいのかと思います。手前味噌に聞こえるのかもしれませんが、発信し続けていることの事実と、ドラマの中身から評価できるものです。東洋経済オンラインでは1億5000万PVを突破する人気連載として続き、そして『東京貧困女子。彼女たちはなぜ躓いたのか』というタイトルで書籍化されています。「Yahoo!ニュース 本屋大賞2019年ノンフィクション本大賞」にノミネートされた実績も持っています。

街の本屋で思わず手に取った書籍

本屋に並び始めた2019年に、大木プロデューサーが街の本屋でたまたま目にし、そのタイトルのインパクトの強さから思わず手に取ったこともきっかけとなって、時を経てドラマ化されたそうです。

「 “東京”と“貧困”、そして“女子”という文字が並ぶタイトルには奥行きがあると思いました。かつて思い描いていた日本の豊かさと現状とでは明らかにギャップがありながら、普段は日々の忙しい生活の中でそのことについてあまり考えずにいた自分自身に違和感まで覚え、素通りできませんでした。買ったその日のうちに読んでしまいました」と話す大木プロデューサーの熱量も少なからずドラマの節々から伝わってきます。

姉を援助したことで、富裕層から貧困層に転落した女性を霧島れいかが演じる(画像:WOWOW)

大木プロデューサーは演出を手掛けた1人の制作会社ザ・ワークス所属の遠藤光貴や脚本を担当した個人演劇ユニット「タカハ劇団」の主宰を務める高羽彩らと、ドラマのオリジナル設定やストーリーを作り上げ、また「女性による女性のための相談会」に取り組む活動家らにも独自取材したそうです。なかでも女性蔑視のリアルを鋭く描いた第4話は貧困問題の根幹を捉えています。

令和の貧困の現実を見つめ続けて最終話の第6話にたどり着いた時、本の帯にもあり、ドラマの副題とした「貧困なんて他人事だと思ってた」という言葉を自然とこぼす人が必ずいるような気がします。

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長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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