一方で、女性の貧困問題の本質を見抜き、愚直に取材を続けてきた優秀なライターという役どころから、物語の指南役としての役割が作られています。摩子が貧困問題に向き合い、使命感を持って記事を届けていくまで仕事仲間として見守りつつ、﨑田自身も気づきをもらえる良き関係です。あるようでない編集者とライターのバディドラマを楽しめることも醍醐味にあります。
貧困とは無縁そうな主役の2人だが…
ただし、演じる趣里と三浦貴大が揃ってビッグネームの両親を持つ俳優であることはテーマがテーマだけにある意味、皮肉さを感じます。趣里は水谷豊と伊藤蘭、三浦貴大は三浦友和と山口百恵という名の両親の元で育ったことは事実としてあり、名前を見る限りでは貧困とは無縁そうに見えがちです。
趣里が主演を承諾した後に、三浦に声をかけたという大木綾子プロデューサー(制作時当時、フジテレビからWOWOWに出向、現在はフジテレビに帰任)は「演じていただきたい以上に大きな意図はなかった」と、説明しています。また三浦が冷静に捉えていた様子は「“どの面下げて”というご意見があることはわかっていますが、僕たちでできることがあれば協力させてください。一生懸命演じます」と語っていたという言葉から伝わり、実際に真摯な演技に惹きこまれます。
役者陣はほか、趣里の摩子役の実母を演じる高橋ひとみをはじめ、貧困当事者役として姉を援助したことで負のスパイラルに陥った女性を霧島れいかが、勤務先でのセクハラやパワハラに加えて、家庭内で虐待やDVを受けてきた被害者女性を宮澤エマなど、女優陣の熱のこもった演技もこの作品の強みです。
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