3日間で怒濤の展開「OpenAIクーデター」の顛末 寝耳に水のマイクロソフトは思わぬ獲物を得た

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11月17日から続いた不穏当な動きは、ジョン・スカリーがアップルの創業者、スティーブ・ジョブズを不意打ちで会社から追い出した出来事を想起させる。しかし、ジョブズの追放事件とは決定的に異なる側面がある。

今回の一連の騒動は、極めて高い倫理性が求められるAGIの実現をOpenAIが目指す中、資本主義社会においてどのようにその理想を実現するか、さらには妥協点をどこに求めるかといった考え方の相違が原因で起きている。

ジョブズ追放はアップルの企業価値を高めるために下したスカリーの判断(のちに間違いだったと彼は発言している)だったが、OpenAIのケースは、究極のAGI開発を目指す組織がどこまでビジネスの世界と交わることができるのかという、思想をめぐるものだ。

2019年に設立された営利法人もまた、極めて特殊な法人だ。AGI実現までに開発した成果はライセンスやサービスなどで収益化を図り、株主や社員への還元も行うものの、一定以上の利益は最上流であるOpenAI, Inc.の収益となる“利益上限法人”だ。さらに法人設立時の規定によれば、どんな企業でも完成したAGIのライセンスは受けることができない。

よって、営利法人のライセンスやサービスでビジネスをしていた企業(マイクロソフトなど)にもライセンスすることはない。いわばAGI実現までの間、時限的に設置される営利法人だ。

アルトマンとの間に生まれた溝

2019年以降、マイクロソフトが巨額出資によってOpenAIの最新ソースコードに独占的にアクセスできる権利を得た際には、非営利で中立であるはずのOpenAIの研究成果が特定企業に独占されることに対して違和感を覚えた読者もいるだろう。

当時CEOだったアルトマンは、AGI実現後の理想郷を追い求めながら、膨れ上がる研究開発コストの調達規模を拡大させる形を模索していた。一方でそのアルトマンの手法は、よりアカデミックな思想を持つ取締役からは支持されなかった。

そして2023年10月に入る頃、大手ベンチャーキャピタルのスライブ・キャピタルとの巨額出資交渉が伝えられると、アルトマンと、今回解任に動いた取締役たちとの間の溝は静かに深まっていった。

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