「被災企業への新規融資を促す仕組みが必要だ」−−二重債務対策ファンド構想を表明した岩手県庁担当者に聞く
東日本大震災で甚大な被害を受けた東北太平洋側の沿岸部。多くの中小企業が津波で工場等の設備を失い、いまだに事業の休止を余儀なくされている。沿岸地域の経済復興、雇用確保のためにも被災企業の再建が急がれるが、その障害となるのが二重債務の問題だ。
津波で設備・施設が消えても借金は残っている。再建のために再び新たな設備資金の借り入れを行えば、「借金が二重に膨れ上がって、すぐに首が回らなくなってしまう」(三陸の水産加工会社)。
こうした問題にいち早く動いたのが岩手県だった。岩手の達増拓也県知事は5月初旬の復興構想会議の場で、岩手県版となる「二重債務問題対策ファンド」の創設を提唱し、実現に向けて国に財政的な協力を求めた。同ファンドは、 国や県、金融機関等の出資によって設立。被災企業に対する既存の融資を金融機関から買い取り、最終的にはその一部を債権放棄する、という枠組みだ。
その詳細や実現可能性について、構想を練った岩手県商工企画室の飛鳥川和彦・企画課長に聞いた。
−−被災企業の二重債務問題に絡み、岩手県はいち早く独自のファンド創設を提唱した。
今回の震災で、岩手県内の沿岸部の企業・事業者は深刻な被害を被った。水産加工の工場設備、小売り・卸の商業施設、ホテル・民宿の宿泊施設などが壊滅的な状態となり、沿岸地域の産業基盤が失われてしまった。
沿岸地域の経済復興にはこうした被災企業の再建が不可欠だが、被害があまりに甚大で、個々の企業の努力だけでは限界がある。被災した企業はマイナスからのスタート。設備復旧のための新たな借り入れで新旧の二重債務を抱えることになり、経営者にとって財政的にも精神的にも負担が重い。