「被災企業への新規融資を促す仕組みが必要だ」−−二重債務対策ファンド構想を表明した岩手県庁担当者に聞く

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−−ファンドの概要は?

手順としては、金融機関から被災した県内企業に対する既存の融資(企業側にとっては既存の借入金)を買い取り、まずはその返済や利払い義務を凍結する。その後、再建の動向を見ながら、必要な金額を債権放棄することで二重債務を軽減する。想定しているファンドの活動期間は10年で、解散時に残っている保有債権は金融機関に再び買い取ってもらう。

−−被災企業の再建問題を考える際、そうしたファンドがある、なしでは、どんな違いが予想されうるのか。

われわれが一番危惧しているのは、資金供給の問題だ。事業を再開するためには新たな借り入れによる設備投資が必要となるが、被災した企業はバランスシートの左側の「資産」がほとんど消え、右側の借入金を中心とする負債だけが残っている状態。金融機関の立場から考えると、そうした財務状況の企業に対して新たな融資は難しい。この点は、公的な保証協会や政府系金融機関にしても同じ。いくら経営者に事業再開の意欲があっても、再建のための資金調達ができなければ、どうにもならない。

−−つまり、二重債務の問題が根っこにある限り、物事は前に進まない?

少なくとも、われわれはそう考えている。このファンドの目的を一言で表現するなら、民間金融機関からの新規融資が可能な状況を作り出し、被災企業の再建を後押しすること。ファンドが買い取った債権を一部カットすれば、被災企業のバランスシートが修復され、金融機関も新規の融資がしやすくなる。ファンドを利用する金融機関に対しては、対象企業の再建に必要な資金の供給を約束してもらう。

--金融機関から債権を買い取る際、その価格は何を基準とするのか。

スピードを優先するため、現時点では「簿価」での買い取りを念頭に置いている。被災企業の返済能力は乏しいうえ、津波でやられた地域は今の土地の担保評価がゼロに等しい。そうなると、債権の「時価」は限りなくゼロに近づき、金融機関からすれば「そんな価格では売れない」となる。かといって、適正価格はいくらかという議論を一件一件やり始めると多大な時間を要し、ファンドが機能しないまま時間だけが浪費されることになりかねない。

一方で、ファンドが簿価で買い取って債権放棄すれば、ファンドがすべの損失を被ることになる。スピードを優先するとは言っても、それはそれで問題があるのも事実。ならば、簿価をベースにして一律、簿価の7掛けで買い取るとか、最終的な債権放棄による損失をファンドと金融機関が折半で負担するなど、いろんなやり方があると思う。そうした実務的な部分はこれから詰めていけばいい。

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