中村以外にも、栗山巧、浅村栄斗、秋山翔吾、山川穂高、森友哉など、スケールの大きな打者が西武から数多く育っている。
だが、主力が一定の登録日数を満たした後、FAになって退団していくのが悩みの種だ。
浅村は東北楽天ゴールデンイーグルス、秋山はシンシナティ・レッズ(現在は広島東洋カープ)、森はオリックス・バファローズに移籍した。
年俸面に加え、所沢という立地(地方遠征の場合、新幹線の東京駅や品川駅、飛行機の羽田空港まで1時間以上かかるなどアクセスが悪い)、元編成責任者が交渉時に心無い発言をしていたことなどが理由と考えられる。
「枠」の中で戦いを繰り広げるのがプロ野球の特徴
プロ野球の特徴は「枠」の中で戦いを繰り広げることだ。
一軍登録数は31人、ベンチ入り人数は26人、支配下選手は70人などという制限の中で12球団がしのぎを削っている。
一軍に登録できない育成選手は無制限に抱えられるが、1人の育成選手につき年間1000万円程度のコストがかかるとされる。
FAで主力が退団する一方で獲得が少ない西武の場合、選手をうまく育てなければ勝つことは難しい。そこで2020年に始まったのが「育成改革」だ。秋元ディレクターが説明する。
「マネーゲームに対抗するには育成だ、となりました。単純に施設を良くして選手にスキルを養わせるだけでなく、いい選手を育てるには指導者も育てないといけない。そのためにいろいろな研修を行っています」
西武は2019年に室内練習場や選手寮、翌年にファームの本拠地CAR3219フィールドを新装した。
こうしたハードは鍛錬を積む場になる一方、選手たちの才能が開花する可能性を少しでも高めようとさまざまな手を打っている。目指すのは「主体的に行動できる選手」を育てることだ。
ドラフトで指名された全選手が一定以上のポテンシャルを誇る一方、プロ入り後に活躍できる者は限られる。
取材者として観察を続けていると、一軍でコンスタントに活躍する選手とそうでない者に明確な違いを感じるようになった。「思考力」だ。
とりわけ痛感させられたのが、ともに1988年生まれで西武に同時期に在籍した秋山翔吾と木村文紀の差だった。
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