「渋谷ハロウィン中止」に見る日本の不寛容の本質 イベントで街占拠が当たり前の国も

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ドイツと日本の公共の場所でのマナーに対する許容度の違いはわかっていただけたと思います。ではなぜドイツと日本ではここまで考え方が変わるのでしょうか。

その背景を探るうえで、ドイツでも比較的保守的なイメージのあるミュンヘン滞在中に経験したことをこれから書きます。

ミュンヘンで気づいた日本との週末の違い

日曜日にミュンヘンに滞在していた私は、スーパーマーケットがほとんど閉まっていることに気づき愕然としました。人口150万人のミュンヘンは日本で言えば福岡か札幌ぐらいの都会で、日本人の感覚からすれば休みの日だからといって買い物に苦労するとはつゆほども思いませんでした。

いろいろと調べ、長距離移動バスや鉄道が終着するターミナル駅周辺のスーパー1、2軒が営業していることに気づいて事なきを得ました。

ドイツは日本と同じくレジなどの軽作業は外国人労働者も多いのですが、日曜日は本当に有色人種しかおらず、なぜドイツ人は日曜日に働かないんだろうと思いましたが、そこである結論に至りました。

その結論は、日曜日のミュンヘンの人の多くは、教会に行って礼拝に行っている、ということです。キリスト教徒の多くは日曜となると午前中は礼拝に行って、午後は家族のための時間を過ごします。もちろん日本と同様に事実上無宗教の方も多いですが、それでもこの都市の基本マインドはキリスト教に準じたものであり、だからこそ日曜日に人前に出て働くのは少し恥ずかしいこととなっています。

そもそも、キリスト教の教えとして、労働(金儲け)はどこか恥ずかしいこととされています。この宗教観からくる違いはかなり大きいと言わざるを得ません。勤勉な日本人は、休みの日に働いている人はむしろ偉い人であり、少なくても日曜に働くことは恥ずかしいことではありません。

だからこそ、仮にビジネス上の理由で渋谷駅を占拠するイベントを行うのであれば反対はしないけど(東京オリンピックのマラソン競技で街を一定期間占拠することは大きな反対はありません)、ただ若者(?)が騒ぎたいだけで道を占拠するのは迷惑千万という認識になるのでしょう。

しかし、ドイツ人からしたら、礼拝が終わった午後なら、家族で休んでいるわけですから、街を通行止めにしてイベントをしようが構わないという結論になります。

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