「ガザ紛争」原油価格を左右する"危険シナリオ" 蓋然性は低いが現実化すると大きなインパクト

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もし仮に今回の奇襲攻撃への「イランの関与」の疑惑が強まれば、アメリカはイランへの経済制裁強化に動く恐れがあります。これは、イランによる国際市場への石油輸出を低下させる圧力を発生させるとともに、原油価格の上昇を促すでしょう。

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原油価格=ガソリン価格の上昇は、来年に大統領選挙を控えたバイデン政権にとって好ましくないのは明らかです。それでも、アメリカ国内からの圧力が働いてイランに対して厳しい姿勢を求められる可能性は少なくありません。

また、イスラエルが今回の奇襲攻撃の背後にイランを認めるシナリオはどうでしょうか。その場合、イスラエルは報復に動くことも考えられ、経済的なダメージを与えるために石油関連施設への攻撃の可能性も想定されます。

この場合も、イランの石油供給が減り、イスラエルとイランの双方が直接対峙するために地域の地政学的なリスクがさらに高まります。イランの反応次第では、中東地域全体の石油供給そのものに影響を及ぼすリスクは増大するでしょう。

いずれのシナリオも蓋然性は低いが…

繰り返し述べますが、いずれのシナリオも蓋然性は現時点では非常に低いと思います。それでも、現実に起きればインパクトは大きいでしょう。もし今後、原油市場に不安定化が起きれば産油国・消費国ともに速やかな市場安定化への対応が求められます。産油国には増産が、消費国では備蓄放出などが必要になる場合もありうるでしょう。

また、中長期的な観点でも、中東の石油は市場において最も競争力があり、世界各国は脱・中東石油を実施しようとしても難しい面があります。主要プレイヤーであるOPECプラスとサウジアラビアがどのような動きに出るかが今後とも重要なポイントになり続けることは間違いないでしょう。

小山 堅 日本エネルギー経済研究所専務理事・首席研究員

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こやま けん / Ken Koyama

1959年、長野県生まれ。早稲田大学大学院経済学修士修了後、1986年日本エネルギー経済研究所入所、英ダンディ大学にて博士号取得。 研究分野は国際石油・エネルギー情勢の分析、アジア・太平洋地域のエネルギー市場・政策動向の分析、エネルギー安全保障問題。雑誌やテレビなどのメディアなどにも多数出演する。

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