「ガザ紛争」原油価格を左右する"危険シナリオ" 蓋然性は低いが現実化すると大きなインパクト
しかし、当座の原油価格を見てもわかるように、中東からの供給は通常の状態を維持しています。読者の皆さんが知りたいのはこれからどうなるかということでしょうが、地政学的なリスクのみで原油価格を動かすことには限界があり、市場の関心が大きな視点で需給のファンダメンタルズに立ち返る可能性が高いのではないかと私は考えています。
というのも、中東情勢が原油市場に影響を与えるとしたら、そもそもその時点での原油市場の需給がどのような状態にあるのかが重要だからです。
IEA(国際エネルギー機関)の資料「Oil Market Report」によれば、2023年後半までは世界全体で石油の需要が超過する状態が予測されています。
今後の原油価格を左右するポイント
一方で、先物市場は2023年末ではなく、2024年の頭も意識し始めており、その予測では来年の前半は供給超過を予測するデータが出ています。これらは世界経済への予測に大きく影響されているわけであり、中長期的な原油市場ではやはりファンダメンタルズからの視点が重要というわけです。
もちろん、今後の原油価格を左右するポイントとして、中東からの石油供給に支障が出るかどうかも非常に重要です。
先ほど述べた通り、イランはイスラム諸国に対してイスラエルへの石油禁輸を呼びかけましたが、その効果については不透明です。OPECは政治的な問題とは距離を置くスタンスを取っていますし、仮に禁輸を開始した場合世界の石油離れを加速させることになり、産油国自体にマイナスに働くことも想定されます。
あくまで仮定という前提でお話を進めますが、今回の奇襲攻撃における「イランの関与」がこれからのシナリオにおけるひとつの焦点になってくるでしょう。イランは直接関与を否定していますし、関与を示す証拠も出ていません。アメリカも現時点でそれを認めています。しかし、この関与の疑惑が今後どのように展開して、それをアメリカとイスラエルがどう認識するのかが重要です。
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