木村裕美:みらい家庭科ラボの木村裕美と申します。私は都立高校で27年間、家庭科の教師をしていました。都立高校では「人間と社会」という総合的な探究の時間として実施している教科の研究開発にも長く携わっていました。50歳を機に仕事を辞め、今は大学や高校でリーダーシップ教育を行ったり、コーチングを提供したりしています。「教師力」を維持したいので、週に1日、都立高校で家庭科の授業を担当しています。『ライフ・シフト』でいうなら、「ポートフォリオ・ワーカー」のステージです。
家庭科の教科書では、まず「人生を設計する」というところからスタートします。そのうえで、それを生活に落とし込み、技術として学んでいく。
教師人生を通して「人生を考える」ことを子供たちに伝え続けたいと思っていますが、ある高校でこんなことがありました。「人生をトータルで長く考えていこう」と生徒たちに伝えたときに、「先生、それはわかるけど、今じゃない」と。部活動や受験勉強で日々忙しい。まずそれをクリアしてから人生を考えたい。だから「ちょっと待ってくれ」というわけです。
とはいえ、今から考え続けることが大事なのだと、授業を通して伝えていけたらと考えています。
答えが1つでない時代のキャリア教育とは
齋藤亮次:公文国際学園の齋藤亮次と申します。学校では地理やキャリア教育を担当、今年からはブランド分析室にも所属しています。
2年前に1年間の育休を取得し、その間にリスキリングで国家資格を取得したり、アントレプレナーシップを養成するプログラムに参加したり、小さなシフトをしているところです。
人生がマルチステージ化するとは、やり直しがきき、答えが1つではない時代になっているということだと私は考えています。その中でキャリア教育、進路指導はどうあるべきなのか。
今、私が感じているのは、学んだこと自体の賞味期限は短くなる一方、情動を伴った学びというのはその子にずっと寄り添っていくのではないかということです。
心理学者のチクセントミハイがいうように、何かに没頭するような「フロー状態の学び」をどう設計していくか。教員は子供たちをよく観察しつつ、適度に失敗させ、適度に成功させる。自己効力感を育むような学びが子供たちには必要なのではないかと思っています。