「頑張って前に進め」と教える学校に潜む大問題 「人生100年時代」を生きる力の育み方【前編】

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木村裕美(きむら・ゆみ)/みらい家庭科ラボ共同代表。都立高校の家庭科の教諭として定時制、職業科、改革推進校、進学校、新設校などに勤務。都立高校在職中に、東京都教育委員会設定教科「人間と社会」の研究開発委員、ZKK(全国家庭科教育協会)理事、NHK高校講座「家庭総合」監修者を務め、2022年3月に退職。現在は、早稲田大学にてリーダーシップ教育支援、淑徳大学、立教新座高校にてリーダーシップ教育に関する授業を担当。玉川大学では小学校の教員養成に関わっている。ライフワークとしては、「みらい家庭科ラボ」を立ち上げ、オンラインカフェの運営や、授業に関するコンサルタントを実施し、コミュニティ運営に力を入れている。『16歳からのライフ・シフト』(東洋経済新報社、編集協力)
(画像:未来の先生フォーラム)

木村裕美:みらい家庭科ラボの木村裕美と申します。私は都立高校で27年間、家庭科の教師をしていました。都立高校では「人間と社会」という総合的な探究の時間として実施している教科の研究開発にも長く携わっていました。50歳を機に仕事を辞め、今は大学や高校でリーダーシップ教育を行ったり、コーチングを提供したりしています。「教師力」を維持したいので、週に1日、都立高校で家庭科の授業を担当しています。『ライフ・シフト』でいうなら、「ポートフォリオ・ワーカー」のステージです。

家庭科の教科書では、まず「人生を設計する」というところからスタートします。そのうえで、それを生活に落とし込み、技術として学んでいく。

教師人生を通して「人生を考える」ことを子供たちに伝え続けたいと思っていますが、ある高校でこんなことがありました。「人生をトータルで長く考えていこう」と生徒たちに伝えたときに、「先生、それはわかるけど、今じゃない」と。部活動や受験勉強で日々忙しい。まずそれをクリアしてから人生を考えたい。だから「ちょっと待ってくれ」というわけです。  

とはいえ、今から考え続けることが大事なのだと、授業を通して伝えていけたらと考えています。

答えが1つでない時代のキャリア教育とは

齋藤亮次(さいとう・りょうじ)/公文国際学園中等部・高等部教諭/ブランド分析室。早稲田大学教育総合研究所特別研究員、厚労省公認キャリアコンサルタント。誰もが自分らしく生きていけるために、キャリア教育として社会科教育や探究学習、アントレプレナーシップ教育、進路支援、学校と教師のトランジションなどに取り組む。 自らもジェネレーターとして数々の探究学習や国内外フィールドワークを設計し、生徒と取り組んだ「SDGsを漫画で学べるトイレットペーパー」で日本トイレ大賞2021を受賞。今までに中高生延べ1000人以上のキャリアを支援し、探究学習とキャリア教育のアップデートに取り組む。『16歳からのライフ・シフト』(東洋経済新報社、編集協力)、共著に『SCHOOL SHIFT』(明治図書出版)など
(画像:未来の先生フォーラム)

齋藤亮次:公文国際学園の齋藤亮次と申します。学校では地理やキャリア教育を担当、今年からはブランド分析室にも所属しています。

2年前に1年間の育休を取得し、その間にリスキリングで国家資格を取得したり、アントレプレナーシップを養成するプログラムに参加したり、小さなシフトをしているところです。

人生がマルチステージ化するとは、やり直しがきき、答えが1つではない時代になっているということだと私は考えています。その中でキャリア教育、進路指導はどうあるべきなのか。

今、私が感じているのは、学んだこと自体の賞味期限は短くなる一方、情動を伴った学びというのはその子にずっと寄り添っていくのではないかということです。

心理学者のチクセントミハイがいうように、何かに没頭するような「フロー状態の学び」をどう設計していくか。教員は子供たちをよく観察しつつ、適度に失敗させ、適度に成功させる。自己効力感を育むような学びが子供たちには必要なのではないかと思っています。

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