物議呼んだ「90歳の車椅子登山」知られざる舞台裏 三浦雄一郎氏の次男、豪太氏はどう支えたのか
コロナ禍前の2019年8月、当時のメンバー全員に先輩、後輩も駆けつけて、アウトドア用車椅子を引っ張るメンバー30人ぐらいを含めて、ラガーマンたち100人以上が集結した。
天候にも恵まれ、プロジェクトは大成功だった。杉田さんが自分の足で山頂に到達したとき、ラグビー部のメンバーたちと僕は気持ちがひとつになった。内側から込み上げてくるような感動と高揚とがあった。
「インクルーシブ」が、今後ますます重要になっていく
中岡さん、杉田さん、その仲間たちと共有した時間は、僕の人生に強く影響を与えるものだった。
僕はこれまでも、体力の衰えと病気を抱えた父がどうやったら登頂できるだろう?
というのを必死に考えながら、そして一緒に楽しみながら挑戦を続けてきた。
いろいろな人たちにこの考え方や技術を伝えられないかなと思ったのだ。
これまで、メディアで中岡さんや杉田さんのような例が取り上げられる際は、周りの人たちが大変な思いをしているように描かれることも多かった。中岡さんは見知らぬ人に「人に迷惑をかけちゃダメじゃないか」と言われたこともあったとか。
冗談じゃない。中岡さんの仲間も、杉田さんの仲間も、そして僕も、対等な関係にある同じチームの仲間として、一緒に楽しみたいからやっているのだ。
そんな世界をもっと広めたい。障がいがある人も、体力が衰えた高齢者も、どんな人でも山に登ったり、スキーをやったりできるような環境作りをやっていきたい。
僕は山やスキーが専門なので、どうしてもそっちの方向になるが、きっと他のジャンルでも僕らと同じようなことを考え、活動している人が世界中にいるだろう。
年齢、性別、性自認、国籍、疾患や障がいの有無、宗教などなど、一切を問わず、すべての人に公平なチャンスがある社会に少しでも近づく動きは、世界的に進んでいるように感じる。
「インクルーシブ=多様な人々をすべて包み込む」という考え方が重要なのだ。
「人間にはそれぞれのエベレストがある」。父はそう考えている。
どんな人でも、分野を問わずに、その人が目指すべき最高の目標があるということだ。障がいのある父は、父なりに最大限の目標を掲げ富士山に挑んだ。
人それぞれに多様な目標を持ち、その多様性が尊重されることが、日々重要性を増している。
インクルーシブ野外活動の考え方は、とくに超高齢社会を迎えた日本では、ますます必要とされるものになっていくだろう。
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