物議呼んだ「90歳の車椅子登山」知られざる舞台裏 三浦雄一郎氏の次男、豪太氏はどう支えたのか

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実は、父のように障がいがある人も、野外活動を楽しめるようにしていこう、という取り組み「インクルーシブ野外活動」が世界各地で始まっている。

僕自身も、引き続き冒険家の父のパートナーとして活動を続けつつ、これからはますます、それと同じだけのパワーをインクルーシブ野外活動に注いで、何らかの事情で野外活動の機会がなかった人、遠のいてしまった人たちにも、自然や山の素晴らしさを分かち合う活動を続けていきたいと考えている。

ここでは、そのインクルーシブ野外活動の意味や意義について書いてみたい。

座ったままで滑ることができるスキー

2022年の1月、僕と父はデュアルスキーのデモンストレーションを行った。

デュアルスキーは、ひとことで表現すれば、「スキーの技術がなくても、座ったままで滑ることができるスキー」だ。

背もたれのあるイスの下に2本のスキー板が付いている。後ろでもうひとりのスキーヤー(パイロット)がデュアルスキーを操作しながら滑る。

2022年1月にデュアルスキーのデモンストレーションを行った(写真:『諦めない心、ゆだねる勇気 老いに親しむレシピ』)

パラリンピックでおなじみのチェアスキーは自分で操作するもので、一定の滑走技術が求められる。初心者がいきなり滑るのはむずかしい。これに対し、デュアルスキーは「パイロット」がコントロールする。つまり、誰でもスキーの感覚を味わえる。

デモンストレーションでは、父が座ったデュアルスキーを僕が操作した。

デュアルスキーは、椅子に座った人を、後ろから「パイロット」がコントロールする。リフトにも乗ることができる。障がいのある人や高齢者の可能性を広げることが期待されている(イラスト:『諦めない心、ゆだねる勇気 老いに親しむレシピ』)

2022年12月、北海道最高峰の旭岳を有する大雪山でのスキー滑走に挑んだときも、このデュアルスキーは役立った。

当時、父はリハビリの成果で「寝たきり状態」から劇的な回復をしつつあり、腰にロープを回し、それを僕が後ろから持ってコントロールするスタイルだが、父が自分の足で滑りつつ、何かアクシデントがあった場合にデュアルスキーを使うプランを立てたのだ。

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