世界的な流れとして自由競争をしなければいけない。そもそも1939年に作った法律に基づいて、戦後の高度経済成長期に保険業界を主導するのはむちゃくちゃなんですよ。
業界をよくするためには法律を変え、時代に合った商品やサービスを提供することで競争する必要がある。金融制度改革のころ、そんな思いで上司とともに保険業法の改正に必死で取り組んでいたんです。
ところが、95年にようやく保険業法が改正されても、しばらくしてトップが替わり、すぐに「やっぱり数の力」という流れに戻ってしまいました。どんな国でも組織でも、意思決定権者の器以上のことはできません。経営層ではない人間が会社の経営を変えることは100%できない。
それが人間社会の現実ですが、なぜ業界は僕が諸先輩から教わってきた逆の方向へ進んでいくのかという思いをぬぐい切れませんでした。
その後、55歳のときに役付定年で日本生命から子会社へ移りました。周囲を見ていると55歳で子会社に行ってから本社に戻った人はいません。僕はもう生命保険と接することはないだろうなと思いました。
そこで、遺書のつもりで『生命保険入門』(岩波書店)を書いたんです。若い人たちに僕が諸先輩から教わってきたことを伝えようという気持ちで書きました。おそらく日本にある生命保険の本ではいちばんおすすめの本ですよ(笑)。
実はこの本にライフネットの構想もすでに示されているんです。だから、ライフネットの枠組みは、谷家さんを交えて岩瀬と初めて会ったときに30分くらいでできちゃったんです。
(撮影:尾形 文繁)
1948年三重県美杉村(現・津市)生まれ。京都大学法学部(専攻:憲法)を卒業後、72年に日本生命保険相互会社に入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に東奔西走する。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、同社を退職。2005年より東京大学総長室アドバイザー(非常勤。07年まで)を務め、06年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。07年より早稲田大学大学院講師(非常勤。08年まで)。08年の生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。10年より慶應義塾大学講師(非常勤)。
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