5分でわかる! 経産省「企業買収の行動指針」 「真摯な買収提案」には「真摯な検討」を

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こうした動きに呼応して、金融庁の金融審議会でも公開買付制度や大量保有報告制度の見直しが進む。こちらは議論の最中で、今年度中にも取りまとめが行われる予定。新指針が法改正を伴わない「ソフトロー」であるのに対して、金融庁の取り組みは会社法の改正も視野に入る。

そもそも、現在の大量保有報告制度の下では、制度の複雑さなども相まって提出遅延が相次いでおり、それに対する罰則も機能していないのが現状だ。

原則を明確にすることで議論を円滑に

経産省と金融庁、それぞれの取り組みは「別々のもの」と両省庁は口をそろえるが、座長(神田秀樹・学習院大学教授)を含め検討会のメンバーは多くが共通する。今後、法令面でも整備が進む見込みだ。

これまで見てきたように、新指針は株主利益の尊重を原則として買収手続きを行うよう整理したものだ。原則を明確にすることで、買収者、対象会社双方が前提を共有し、議論を円滑に行えるようにする狙いがある。

経産省の研究会委員で、買収防衛を含め多くの案件に関わってきた太田洋弁護士は、対象会社が姿勢を改める必要性を指摘する。「これまでは買収提案を『ありえない』で一蹴できていたが、簡単にはできなくなった」。

高橋 玲央 東洋経済 記者

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たかはし れお / Reo Takahashi

名古屋市出身、新聞社勤務を経て2018年10月に東洋経済新報社入社。証券など金融業界を担当。半導体、電子部品、重工業などにも興味。

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