国連が決定!「管理職の5割を女性化」の衝撃 「2020年までに女性3割」では遅い?

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――国連で決まったことは、多少のタイムラグはあっても、いずれ日本社会にも浸透していくのでしょうか。

そうですね。わかりやすい例として、最近の安倍政権の女性政策の歴史的・国際的な背景を振り返ってみましょうか。

「女性3割」は安倍政権のオリジナルではない

そもそも「2020年までに指導的立場の3割を女性に」という目標設定は、安倍晋三首相のオリジナルなアイデアではありません。平成15(2003年)年6月20日に内閣府男女共同参画推進本部は「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも 30%程度になるよう期待し、政府は、民間に先行して積極的に女性の登用等に取り組む」と決定しています。

国連本部

つまり「女性管理職3割」は日本政府の方針としては10年以上前に決まっていたことで、安倍首相はそれを成長戦略として位置づけた、ということが付加価値なのです。

なぜ、2003年に「女性3割」と決定されたのか、これは、国際社会の動き抜きには語れません。話はさらに1990年にさかのぼります。国連経済社会理事会において「1995年までに30%」という決議が出されました。背景には、意思決定の場にクリティカルマスの女性が必要という問題意識があります。この決議は日本では第2次男女共同参画基本計画に反映されました。

――国連での決定が政府の方針に影響を与えてきた経緯を見ると、今回の「2030年までに50%」もいずれ、国内の政策や企業の方針を変えていきそうですね。

そう思います。最近の特徴としては、ジェンダー平等を達成するために、男性の協力を促進しています。国連女性機関の取り組みにはHe For Sheキャンペーンがあります。

――女優のエマ・ワトソンが国連で行った男女平等推進のスピーチは、日本でもSNSで拡散しました。Twitterにハッシュタグ「#HeForShe」をつけて発言したり、このキャッチフレーズを記した画用紙を持った姿を写真撮影し、インターネットに載せる男性著名人が、特に海外ではたくさんいました。

そうした新しい手法が広まったことは、長年、ジェンダー平等にかかわってきた研究者としてはうれしく思います。「2030年までに50%」については、各国政府の公約をウェブで発信し、世界のメディアと国連女性機関のSNSで共有することになっています。進捗状況が世界に見えるので、一種の競争になるわけです。

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