城崎温泉、攻めの「全旅館一斉休業」知られざる凄さ まち全体で足並みをそろえてコロナ禍に対応

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近年、観光においてDXは大きなテーマとなっているが、それを実現するためにはデータ活用が欠かせない。

DXは単なるIT活用による作業の効率化ではなく、デジタル技術による生活の変革を志向するものであり、既存の価値観を覆す技術革新が期待されるものである。見方によっては「歴史」を破る側に見えるかもしれない。だが、どうもそうではないようだ。

豊岡市が示す、新たな「価値観」

豊岡市は、DX実現に向けて動きを開始しており、具体的な試みに「まち全体が1軒の温泉旅館」というものがある。観光庁や経済産業省などから観光DXの先進事例としても紹介されている。

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そのデータの取り扱いについて示唆深い話がある。

旅館等の宿泊事業者にとっては、本来データは自分たちだけで秘匿したい情報である。データの共有は競合事業者を利する可能性もあると考える方が一般的だろう。けれども、まち全体が1つの旅館とする、共存共栄という自分たちの経営哲学からは「公共財としてのデータ」という発想が生まれている。

つまり、豊岡は「地域の公共財としてのデータ」と「私企業の機密情報としてのデータ」という矛盾を、共存共栄という地域の歴史が育んできたコンセプトで突破しようとしているのだ。

今後、どのような結論になるのかは分からないが、既存の価値観を破壊するイノベーション的改革のよりどころが、まちの歴史から読み解かれようとしているのだ。

久保 健治 ヒストリーデザイン代表

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くぼ けんじ / Kenji Kubo

1981年、東京都中野区生まれ。武蔵野大学神田外語大学兼任講師。NPO法人全日本ディベート連盟専務理事。データストラテジー株式会社研究員。創価大学大学院文学研究科人文学専攻博士後期課程単位取得満期退学。修士(歴史学)。近代日本史料研究会、藤沢市史の史料編纂に従事した後、東京工業大学特任講師、ソーシャルメディアマーケティング会社を経て株式会社ヒストリーデザインを設立。専門は地域マーケティング論、経営戦略論、地域資源論。経営学者兼コンサルタントとして、観光分野を中心に歴史を活用した経営戦略の理論研究とビジネス実践を行っている。

 

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