一時期は国内観光客の減少に苦しんでいたが、近年ではインバウンド観光に力を入れており、外国人宿泊者数が6年で約45倍を達成。国内向けにもさまざまな施策を実施するなど、先進的な取り組みで注目されている。実際に、豊岡市のDMOである豊岡観光イノベーション(TTI)は第13回観光庁長官表彰を受賞している。
私は数年前からTTIのアドバイザーとして国内外向けの観光振興に取り組んでいる。もちろん、差別化戦略としてヒストリカル・ブランディングにも取り組んでいるが、データストラテジー株式会社の研究員としても関与しているので、デジタルマーケティングの実装についても一緒に活動している。
そこでは、歴史とイノベーション技術の接点も始まっている。
豊岡市が選んだ「攻め」の一斉休業
2020年、世界中を巻き込んだコロナウイルスによるパンデミック時に、豊岡市ならびにTTIはいち早く地域全体で対策を行った。例えば、感染拡大が深刻になってくると、城崎温泉は2020年5月末まで全旅館が一斉休業する思い切った対応を行っている。
緊急事態宣言とはいえ、「統一感」を出すことはかなり難しい。組合などがあったとしても、究極的には各旅館やホテルは一国一城であり、営業の自由はそれぞれに存在している。それらを規制することは法律では不可能だからだ。
しかも、城崎温泉の一斉休業は、ある意味では「攻めの休業」でもあった。6月1日からは開業するという目標を設定すると共に、休業している間に感染対応を行うニューノーマルの旅行受け入れ態勢を構築するため、その準備として城崎温泉の感染症対策ガイドラインの策定に動いたのだ。
ガイドライン策定に私もアドバイザーとして入ったが、単なる感染症対策ではなく、マーケティング的側面も考慮された地域としてのメッセージ性を含んでおり、「攻め」のガイドラインとしての特徴を持っている。
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