城崎温泉、攻めの「全旅館一斉休業」知られざる凄さ まち全体で足並みをそろえてコロナ禍に対応

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内湯訴訟は、まちを二分するほどの熾烈な対立関係を生み出すものだった。これは、外湯文化であった城崎温泉で、ある旅館が自分の旅館に温泉を引く形で内湯をつくろうとしたことを巡って起きた。当時の法律的な結論としては、近代的な法概念に基づいて、内湯は敷地内における私的財産として合法的とされた。

反対派はどのようにこのロジックに立ち向かったのか。訴訟で反対派が提示した根拠は、外湯とはまちの公共財産であるということを記した歴史的文献資料だった。歴史が根拠になったのである(神戸新聞但馬総局、2005)。

重要なのは、共存共栄という経営哲学を確立するうえで、城崎の人たちは自分たちの歴史をそのよりどころにしたということだ。

「公共財」としてのデータ活用

さて、ここで話を過去から今に切り替えよう。いま、新しい時代の公共財について検討が行われている。それがデータである。

豊岡は観光におけるデータ活用を極めて重視しており、実際にTTIでは自らの手でデジタルマーケティングを実施している。私自身も毎週の定例会議に参画しているのだが、毎週上がってくる観光データを基にして、広告や方針について参加者が討議している。

報告をして終わりではない。TTIには役場、観光事業者、地元IT企業といった多様な専門家が参画しているので、それぞれの流儀は厳密には異なるが、全員のアイデアがデータに基づいて議論されるため「空中戦」になりにくい。

TTIはこういった観光におけるデジタルやデータ活用を地域事業者の競争力に転換するべく、IT普及などにも積極的に行動している。

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