歴史で学ぶ「百年戦争」国家間の戦争ではない意外 過去に起きた出来事と現在はつながりがある

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近代以降のヨーロッパでは主権国家が誕生し、民主主義が成長した反面、各地で戦争が多発するという一見矛盾した傾向が見られた。それは、国内社会の民主化が国民意識の高揚をもたらし、対外戦争を支える国内的基盤を強化したためであった。他方、国際法を制定したり、国際機関を設立することによって戦争の勃発を防ぐ努力もなされた。
このように戦争を助長したり、あるいは戦争を抑制したりする傾向が、三十年戦争、フランス革命戦争、第一次世界大戦という3つの時期にどのように現れたのかについて説明しなさい。[東大 2006年 世界史 一部改変]

民主主義の成長によって各地で戦争が多発した、ということについて記述する問題です。たしかに、民主主義の考え方が広まっていったにもかかわらず、いろんな場所で戦争が起こってしまったというのは、矛盾している感覚がありますよね。

また、一橋大学ではこんな面白い問題が出題されています。

ジャンヌ・ダルクの活躍によっても有名ないわゆる英仏百年戦争(1337〜1453年)を、イギリスとフランスという二つの国家間の戦争と捉えることが必ずしも適切ではないとすれば、その理由は何か答えなさい。[2023年 一橋大学 一部改変]

「百年戦争は2つの国家間の戦争ではない」というのは、すごく意外ですよね。この問題は多くの受験生を苦しめました。

実はこの2問は、根本的な部分で大きくつながっており、「戦争」というものを考えるうえで重要なポイントを教えてくれる問題なのです。

それは、「国民国家」というものの考え方です。

近代に入り「国民国家」が根付いた

歴史的な背景で見れば、「自分たちの国」という考え方が生まれて、世界中の人たちが「自分は〇〇国民だ」と考えるようになったのは、近代に入って「国民国家」という考え方がしっかりと根付いたからだと言われています。

近代の国民国家の概念はナポレオンが広めたと言われていますが、ナポレオンがいなかったら、「自分たちは〇〇国民だ!」とアイデンティティーを持って、オリンピックで自分たちの国を応援したり、メジャーリーグで自分たちの国の出身者が活躍するのを自分のことのように喜んだり、自分たちの領土が侵害されて他国に対して怒りを覚えたりすることはなかったわけです。

国や領土を求めて戦争することは昔から「よくある話」だったわけですが、それが全国民の問題として捉えられるようになるまでにはかなりの時間を要したというわけですね。

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