日本人俳優の海外ドラマ「初進出」が相次ぐ背景 キムタク出演パニックSFドラマがカンヌで快挙

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この動きは「THE HEAD」から始まったもので、日本人キャラクターをストーリーに加えることを大物プロデューサーで、本作の製作総指揮を務めたラン・テレムが興味を持ったことも大きかったのです。10月3~6日、スペイン・マドリードの国際ドラマ祭「イベルセリエス」の会場でテレムが話してくれました。

「本来、ヨーロッパの作品に日本人のキャラクターが登場することは馴染みのないもの。でも、Huluジャパンから提案を受けた時、新鮮味を覚えました。多国籍の登場人物で構成され、お国柄の違いが作品の面白さでもあるからです」

ストーリーによっては日本人キャラクターが活かされ、そもそも日本人キャラクターを作り出す交渉の余地があることを象徴する話です。

一方、演技によっては母国語ではない英語のせりふが違和感を作り出すことがあります。そこでテレムは演技指導にも力を入れ、撮影開始の3週間前からマドリードで役柄を理解してもらうための時間を十分に取ったそうです。

「トモ(山下智久)もソータ(福士蒼汰)も英語での演技はその時が初めて。撮影前に、演技する時に英語のせりふを話していることを意識しない状態にまで持っていきました。これは役者が本当にいい演技するための重要なポイントだと思っています。初めてのことで難しいことだったと思いますが、2人ともやってのけてくれました」と、信頼を寄せていることまで伝わってきました。

ファンの反応は世界の中で日本が一番強い

10月3~6日スペイン・マドリードで開催された国際ドラマ祭「イベルセリエス」でドラマ「THE HEAD」の成功ストーリーを語った製作総指揮を務めたラン・テレム(筆者撮影)

また驚いたことがあったそうです。「ファンの反応は世界の中で日本が一番強い。応援することは日本の文化なのでしょうね。日本からの反響の大きさはいつでも最強です」とテレムは話し、共感を得るファンビジネスが世界的に注目されているなかで、日本の強みとして再認識できる発言です。

イベルセリエスの会場では、世界的に成功している「THE HEAD」シーズン3の製作が決まったことも発表されました。再び新たな日本人俳優が配役される可能性は十分にあります。

日本が出資しているという忖度的な理由だけでなく、日本の役者のポテンシャルが認められ、場合によっては日本人キャラクターがストーリーの面白さを引き上げるからです。日本人俳優の海外ドラマ進出はまだまだ続いていくことに期待せざるをえません。

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長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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