「ラグビーW杯」誤審激減でもブーイング急増の闇 ジャッジにITを導入したらどうなるか?

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こうした変化を受けて、ワールドラグビー(WR)は改革を進めました。2003年のワールドカップからプレー映像を再生し判定するテレビジョン・マッチ・オフィシャル(TMO)を導入しました。今大会から、重大な反則の処分をTMOで独立的に判断するバンカーシステムを導入しています。

一連のWRの取り組みによって、誤審の疑惑は激減しています。筆者が見た限りにおいては、今大会の試合中、選手が審判に詰め寄るという場面はありませんでした。セルフジャッジという伝統は消滅したものの、ラグビー選手の審判に対する信頼は、他のスポーツと比べてかなり維持できているように見えます。

SNSの普及がブーイングに影響?

ところが、誤審が減り、選手たちは概ね審判の判定に納得しているのに、ファンのブーイングのボルテージがどんどん上がっています。これは、どういうことでしょうか。

私見ですが、SNSの普及が影響しているように思います。以前は、生活や仕事の不満があっても、ぐっと胸にしまい込むか、親しい人に打ち明ける程度しかできませんでした。ところが最近は、ちょっとでも不満があったらSNSにつぶやくというのが、現代人の行動パターンになっています。

10月15日の南アフリカ対フランスの準々決勝を裁いたベン・オキーフ主審には、負けた地元フランスのファンからのバッシングが、2週間たった今もなお殺到しています。おそらく会場にいた観衆も、SNSにつぶやくのと同じノリでブーイングしていたのでしょう。

せっかく選手が最高のプレーを披露してくれているのに、ブーイングだらけの騒然とした雰囲気になってしまったのは、残念です。とくに、決勝のノーサイドで、歓声がブーイングにかき消されたのは、見ていて悲しくなりました。

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