■人間関係に家庭環境が影響しているケース
前回お伝えした「処理可能感」を高める方法について、高橋さん(仮名/20代男性)のケースで考えていきましょう。
〈高橋さんの場合〉
私は、小学校低学年の頃に両親が離婚し、母子家庭で育ちました。母は看護師で、母の実家の近くで二人で暮らしていました。母が夜勤で家にいないときは祖父母のところに行っていたので、一人ぼっちになることはなかったのですが、父親がいないことを寂しく思うことはありました。
仕事を転々として、ギャンブル好きだった父は、母にとってはよくない夫だったと思いますが、私はよく遊んでもらいましたし、父だけは私のことを褒めてくれました。
祖父母や母は、父親がいないことで私に不憫(ふびん)な思いをさせたくないと、いつも気をつかっていたと思います。偏差値が高い中学校に入れようと、母は塾代を稼ぐために仕事に精を出し、祖父母は食事や塾の送迎をしてくれました。
祖父母と母は口癖のように「お父さんみたいにならないように、勉強してよい学校を出て、大企業に入るか公務員にならないとね。みんなを見返してやればいい」などと言っていました。
もともと理想もプライドも高かったからでしょうか、私にも過剰な期待をし、成績は一番をとれ、有名中学に入れといつも言っていました。「お父さんみたいにならないように……」という言葉に私は反発を覚え、それを聞くたびに悲しくなっていました。
耐えられなくなって一度だけ、母と祖父母の前で父をかばったことがありましたが、母に泣かれ、祖父母からは軽蔑するような態度をとられました。
それ以来、私は3人が望む「優等生」を演じていました。優等生キャラでいれば母の機嫌もよかったですし、いろいろな人から頼られたり、褒められたりしたので悪い気はしませんでした。
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