「優等生演じてきた」彼の大人になってからの苦悩 「なんとかなる」と思えないのは家庭の影響も

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このような状況が続くと、高橋さんはプロジェクトだけでなく良質な人生経験を得るチャンスを逃し続け、処理可能感を高めるきっかけをつかめないことになります。

上司に頼み事をするという経験を重ねる女性のイラスト
人を頼るのが苦手な人でも、小さなことから始めれば成功体験を積んでいける(イラスト:kikiiクリモト)

高橋さんのように、子ども時代に親と親密な人間関係をつくれなかった人は、成長過程において心理的に安全な場所(家庭)がなかったと言います。つまり「安全基地」と言われるものをもたなかったのです。

成長過程で親との間に安全基地をもてなかった人は、大人になったときに“心の安全基地”のつくり方がわからなかったりします。

大人になってからの安全基地は、自分にとってだけ安全で居心地がいいのではなく、お互いが共感し合う良質なコミュニケーションをとっていく場所です。

「安全基地」と言えるほどの人間関係を築くのはとても難しいことですが、一人でも二人でも自分が話しやすそうな人、自分とお互いに良質なコミュニケーションがとれそうな人を探してみることは大切です。職場で安全基地のような存在の人がつくれると、高橋さんの状況も変わっていくのではないでしょうか。

「誰かに頼る」「助けてもらう」

また、高橋さんのような、どこかで自分を信じる力が弱いタイプは、未来に対してネガティブなイメージをもつことがあり、なかなか行動に移せないことがあります。

「自分の足と頭を頼りに販路を拡大してきた」のに、高橋さんは満足のいく結果を得られていません。一方で、苦労をせずに上司や先輩から取引先を紹介してもらって実績を上げている吉田さんのような行動をとることは避けています。

「なんとかなる」と思えるレッスン 首尾一貫感覚で心に余裕をつくる
『「なんとかなる」と思えるレッスン 首尾一貫感覚で心に余裕をつくる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

「誰かに頼る」「助けてもらう」という行動を避けていてうまくいかないときは、深く考えずに吉田さんのような行動をとってみることも必要です。

高橋さんの場合、「上司に『いろいろ勉強させてください』と言って教えてもらう」「先輩に『こういうときどうしたらいいですか?』と聞いてみる」などの、今までとらなかった行動をとってみるといいかもしれません。

行動してみた結果、うまくいかないことももちろんあると思います。ですが、何度か行動を積み重ねるうちに、必ず「教えてもらってうまくいった」「助けてもらってうまくいった」という成功体験も積むことができます。

こうした経験を重ねることで、「人脈」からくる処理可能感が育まれていくのではないでしょうか。

舟木 彩乃 ストレスマネジメント専門家

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ストレスマネジメント専門家。公認心理師・精神保健福祉士。博士(筑波大学大学院博士課程修了)。株式会社メンタルシンクタンク副社長。文理シナジー学会監事。一般社団法人企業広報研究ネットワーク理事。AIカウンセリング「ストレスマネジメント支援システム」発明(特許取得済み)。

カウンセラーとして約1万人の相談に対応し、中央官庁や地方自治体のメンタルヘルス対策に携わる。Yahoo!ニュースエキスパートオーサーとして「職場の心理学」をテーマにした記事、コメントを発信中。著書に『「首尾一貫感覚」で心を強くする』(小学館新書)、『「なんとかなる」と思えるレッスン』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

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