「ChatGPT導入」に及び腰の日本の金融機関の末路 世界の企業は新しい方向への準備始めている

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ChatGPTは金融機関の業務を効率化すると指摘するが、日本の金融機関は導入に向けて及び腰となっている(写真:jinn/PIXTA)
さまざまなレポートが、ChatGPTは金融機関の業務を効率化すると指摘している。顧客の個別需要に応じたサービスの提供が可能になるのは、大きな変化だ。ところが、日本の金融機関は、対顧客サービスにChatGPTを導入することに及び腰だ。これでは、世界の潮流に取り残されるだろう。昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第106回。

文書作成事務の効率化だけではない

ChatGPTをどのような仕事に使えるだろうか? 日本企業へのアンケート調査を見ると、大企業であっても、文書作成事務の効率化などが考えられているにすぎない。しかし、ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)は、企業活動に根源的な大変革をもたらす。そして、世界の企業は、新しい方向を目指して、すでに準備を始めている。

この問題については、すでに多くの論文が発表されているが、ここでは、つぎの3つの論文の分析を紹介する。

<論文1>Wayne Xin Zhao et.al., A Survey of Large Language Models, arXiv:2303.18223 [cs.CL].
<論文2>A. Shaji George et.al., A Review of ChatGPT AI's Impact on Several Business Sectors, PUIIJ, January-February 2023.
<論文3>マッキンゼー・アンド・カンパニー、「生成AIがもたらす潜在的な経済効果: 生産性の次なるフロンティア」、2023年6月14日。

どの論文も、金融は重要な分野だとしている。そこで、以下では、金融部門での利用について見ることとしよう。

論文1は、現在すでにさまざまな取り組みが行われていることを紹介したあと、LLMによる不正確な、または有害なコンテンツの生成が、金融市場に対して重大な影響を与える可能性があるため、金融分野でのLLMの応用には潜在的なリスクを考慮する必要があると指摘する。

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