住友生命保険は、7月、職員約1万人が利用できるChatGPTのシステムを導入した。職員がChatGPTを活用しやすいように、「文章要約」や「新企画提案」など用途ごとに命令文の雛型を用意し利用を促している。
以上を見る限り、社内利用が主だ。ただ、対顧客業務も少しずつ始まっている。T&Dフィナンシャル生命保険(TDF)は、ITコンサルティング会社のエスタイルと組み、コールセンターの業務効率化に向けChatGPTなどのLLMを活用した実証実験を始めた。顧客との会話のやりとりをAIが自動で文字起こしするシステムを導入している。
オペレーターは電話を切った後、文字起こしの文を確認して要約し、管理職に送る作業がある。この文の要約作業をLLMに任せる。また持病がある人の保険引き受けが可能か否かの判断にもLLMの活用を検討する。現状は回答に半日から1日かかる場合があるが、即答できるようになる。
三井住友海上火災保険は、5月中旬に1万人を超える社員がChatGPTを使える環境を整えた(2023年8月15日、日刊工業新聞)。
東京海上日動火災保険は、4月19日、「ChatGPT」を活用した独自システムを導入すると発表した。保険の補償内容や手続きなどの照会に対する回答案を自動生成するシステムで、6月から試験運用する(2023年4月19日、読売新聞オンライン)。
日本の金融機関は、対顧客業務導入に消極的
以上で見たように、日本の金融機関での主たる利用対象は、対顧客業務ではなく、内部的な事務処理になっている(とくに、銀行の場合)。すでに見たように多くのレポートで、金融での応用可能性が高いとされたことに比べると、消極的な姿勢が目立つ。
金融機関は顧客の重要な個人情報を扱うので、対顧客業務への利用に慎重になるのはもっともだ。ただし、それだけでは、生成AIのもつ潜在力を実現せずに終わってしまうことになる。
日本の金融は、かつては銀行オンラインシステムの導入に見られるように、新技術の活用で世界のトップを走っていた。しかし、その後は、世界の金融業が大きく変わっていくなかで、旧態依然たるビジネスモデルにしがみついて、世界の大勢から大きく立ち後れている。
いま、世界の金融機関が、生成AIという新しい技術の活用方法を求めてさまざまな試みを始めている。日本の金融機関がこの流れを無視すれば、金融サービスの高度化という大きな流れに取り残されることになるだろう。
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