いろいろな経験を乗り越え、その経験を知恵として身につけた人は、「これまでの経験上、なんとかなる」とどっしり構えていられるものです。「知力」は、経験から得られるのはもちろんですが、人の話を聞いたり、本を読んだりして、「学ぶ」ことでも備えられるものです。
例えば、詐欺事件に巻き込まれたとします。こうしたときに、以前似たような話を人から聞いていたり、あるいは本を読んで知識をもっていたりしたなら、少しは余裕をもって対処できるはずです。最初にどういった行動をすべきか、どこに相談すべきかがだいたいわかっているので、「なんとかなるだろう」と思えるのです。
小さすぎず大きすぎない負荷
「処理可能感」を高めるにはどうしたらいいでしょうか。
1970年代に首尾一貫感覚を提唱した医療社会学者アーロン・アントノフスキー博士は、処理可能感を高める「良質な人生経験」として、「過小負荷と過大負荷のバランスがとれた経験」をあげています。
「過小負荷」とは、「心理的にほとんど負荷がない、ストレスを感じない状況」のことです。「過大負荷」は、逆に「過度に大きな負荷を強いられた状況」のことで、本人の能力を超えた仕事量や難しい仕事を指示された場合などがこれに当たります。
つまり、「過小負荷と過大負荷のバランスがとれた経験」とは、がんばれば乗り越えられる程度のバランスのとれたストレス下での経験を指しています。
普通に考えると、ストレスをまったく感じない状態が一番いいように思われますが、処理可能感を高めるには適度な負荷やプレッシャーがあったほうがいいことになります。
職場のストレスモデルとして有名なモデルに「仕事の要求度・コントロール度モデル(Job Demands-Control model)」(下図)があります。
この図によると、やりがいを保ちつつパフォーマンスを発揮できるのは、「要求度」(上司などから仕事の量や質について期待されていること)と「コントロール度」(期待に応えるために必要な裁量権を与えられていること)の両方が高い状態と言われています。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら