ソニー「PS5」テコ入れで十時社長が異例の舵取り 大黒柱ゲーム事業の再成長を阻む「3つの壁」

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2022年度は半導体不足の影響でPS5の生産が滞った影響もあり、需給が急激に逼迫した。そのため希望小売価格で5万円前後のPS5が、2倍の10万円で売買されるなど転売目的の購入が急激に膨らみ、年度末期の販売台数を歪めた可能性がある。

年明け以降は半導体不足が軽減し、PS5の需給も緩和した。結果として転売目的の需要がなくなり、第1四半期の販売台数が例年並みの300万台前後となったというわけだ。

価格の面でも攻勢をかけている。今回、日本国内の希望小売価格は引き上げた一方で、アメリカなどでの価格は据え置いた。すでに夏頃から海外で旧モデルの値引き販売も行っており、年末商戦で最も販売台数が伸びやすい10~12月の実績が焦点となる

「PS4」から機能面で進化が乏しい

2つ目の課題は「PS5」そのものの魅力低下だ。業界関係者からは、ソニーのゲーム事業が抱える根本的な問題を懸念する声も聞こえてくる。

ゲームソフト会社の元幹部は「PS5はPS3のときと同じ過ちを繰り返している。ハードウェアの性能向上にこだわりすぎて、肝心の機能面でPS4からの進化に乏しい」と問題視する。

かつては1人で黙々とコントローラーを操作して遊ぶものだったゲームは2000年代以降インターネットに接続され、世界中の人たちと一緒に遊ぶものになった。ゲームソフトの画質や物語のクオリティー以上に重要になっているのがコミュニケーション機能だ。

プレーヤーは文字や音声のチャットが利用できるDiscord(ディスコード)などを介し、つねに他の大勢のプレーヤーとつながった状態でゲームを進めていく。

ゲームソフトそのものもMinecraft(マインクラフト)に代表されるように、必ずしも攻略目的ではなくユーザー同士が協調して想像力を発揮する場として利用されるようになっている。

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