しかし、構想なしに企業のDXは推進できないわけで、「次世代DXビジネスモデルを構想できる」担当者を社内で育成するか、なんとかして外部から探し出してくるしかない。そこで、そのような人材に求められる要件を検討していこう。
ロジカルシンキングができるか?
「DXビジネスモデルを構想できる」人材に求められる要件は、以下のとおりである。
1.既存ビジネスモデルに対する十分な知見、経験があること
2.演繹法、帰納法、仮説思考などロジカルシンキングができること
3.その上で、ロジカルシンキングを捨てて、発想のジャンプができること
「次世代DXビジネスモデル」とは、突然変異でビジネスモデルがガラッと変わるものではない。既存の組織、人材が、既存のビジネスモデルをDXビジネスモデルに進化させていくものである。したがって、既存のビジネス、組織、人材について十分な知見がないと、その組織で実行できる、実行すべきDXビジネスモデルを構想できないのである。
外資系コンサルティング会社が「新たなDXビジネスモデルの提案」をしてくるが、机上の空論で、提出されたパワーポイント資料のまま書庫に入り実現に至らないことも少なくない。それは、既存のビジネス、組織、人材について十分な理解がない提案であり、「あるべき論」にすぎないことが多いからだ。
このような状況に陥らないためには、既存のビジネスを熟知している社内のシニア層(事業部長、取締役)が、「次世代DXビジネスモデルを構想できる担当者」に向いているようにも思える。
しかし、そこで1つ問題が生じる。既存のビジネスを熟知している自社内のシニア層が必ずしもロジカルであるとは限らないということだ。「次世代DXビジネスモデルを構想できる担当者」に求められる第2の要件、それは、演繹法、帰納法などロジカルシンキングができること、さらに帰納法を発展させ、仮説思考ができることである。
MBAや外資系コンサルティング会社では未来を構想する際にPEST(Politics、Economy、Society、Technology)やSWOT(Strength、Weakness、Opportunity、Threat)といったフレームワークを活用する。PESTにせよSWOTにせよ、数多ある世の中の変化を根拠として、自社のビジネスに与える影響を機会と脅威として提示する。それは、帰納法という論理的思考法による。
帰納法とは、複数の事実を根拠として結論を導き出す論理的思考法だ。根拠からこのような結論が得られるというつなぎとなる部分が因果関係であり、この因果関係は、演繹法により導き出される。演繹法とは、AならばB、BならばC、ゆえにAならばCという論理的思考法である。
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