大手損保4社はウミを出し切ることができるか ビッグモーターや保険料カルテルなど問題山積

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そもそも保険料を各社の間で調整する行為は、損保業界で長年の慣行になっていたとみられ、独禁法に抵触するという意識すらなかった社員が少なくないのが実情だ。

中でも法令違反の意識が薄い事例が、契約企業傘下の代理店(企業代理店)を通じた調整行為だ。損保各社の営業担当者同士が密談し、保険料の水準をすり合わせるのは明らかにクロだが、企業代理店の担当者から他社の保険料水準を聞くなどして、提示する保険料を上げ下げすることは「ギリギリセーフと思っている社員は一定数いるはずだ」と大手損保の元役員は明かす。

三井住友海上やあいおいでも意識の弛緩

規制当局の幹部らによると、三井住友海上火災保険では東急の営業担当者から事案の経緯について報告を受けたものの、コンプライアンス(法令順守)部門は当初「問題なし」と判断していたといい、あいおいニッセイ同和損害保険ではコンプラ部門への報告すらなかったという。

そうした拙い初動対応は、両社とも営業担当者の認識の甘さに起因する部分が大きいものの、コンプライアンスリスクに対する意識が全社的に弛緩していたからこそ、起きてしまったことでもあるはずだ。

金融庁は現在、大手損保4社による保険料カルテル問題について、1996年の保険自由化までさかのぼり、企業向け保険についてどのような営業活動をしてきたのか、四半世紀以上にわたる実態を詳細に報告させ、任意でヒアリングを進めている。

保険料調整の疑義が浮上している契約企業・団体は、東急のほか、京成電鉄、成田国際空港、千葉都市モノレール、JR東日本、ENEOS、イオン、日産自動車、ケーユーホールディングス、東京都のほか、損保各社がOBの天下りを受けて入れている警察庁、警視庁にも及んでおり、その数は150を超えた。

ビッグモーター問題と併せて、保険制度への信頼を揺るがす事態に大手損保4社はどう向き合っていくのか。改革の手綱を緩めるようなことがあれば、その信頼は二度と取り戻せなくなる。

中村 正毅 東洋経済 記者

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なかむら まさき / Masaki Nakamura

これまで雑貨メーカー、ネット通販、ネット広告、自動車部品、地銀、第二地銀、協同組織金融機関、メガバンク、政府系金融機関、財務省、総務省、民生電機、生命保険、損害保険などを取材してきた。趣味はマラソンと読書。

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