原子力の平和利用を再検証し、ポスト原発を視野に議論を


ポスト原発へ電力系統再編を

中部電力浜岡原発停止以降も、国の原子力政策の基本に変化はない。電力会社が安全対策を強化し、それを原子力安全・保安院が確認しながら、原発の維持と促進を図る。ただ、福島第一原発事故と浜岡原発停止により、「原発停止ドミノ」の動きも見えてきた。

福島第一原発とほぼ同じ規模の110万キロワット級の沸騰水型(BWR)原発を例に取ると、1プラント当たりシステムが40系統以上、ポンプが約350台、電動機が1300台、熱交換機が140基、バルブが3万個、配管が1万という膨大で複雑な設備を持つ。このうちのいくつかが天災、人災によって破損すると福島第一原発のような甚大な事故が起こる可能性が高い。

原発は法律により、13カ月ごとに設備を定期検査することを義務づけられている。定期検査には約2~3カ月かかる。福島第一原発事故で緊張状態が続く環境では、定期検査が終わった原発の再稼働について、県知事ら地元首長の同意を得ることは難しい。現在でも九州電力玄海原発や北陸電力志賀原発などの再稼働について、地元知事の同意を得られていない。定期検査入りをした原発の「自然死」も予想される。

原発が次々に電源から脱落することが予想される中で、日本が世界一を誇ってきた電力の質(電圧、周波数の安定と停電時間の少なさ)が危機にさらされている。需要側の企業は夏場の15%節電に向けて、土日操業などの対策を発表しているが、供給側の電力系統(発電、送電、配電の統合システム)の再編成がいずれ俎上に載せられる。

すでに、菅直人首相から、電力自由化で見送られた発電と送電・配電の分離構想が示されている。ポスト原発の電力系統をどう再編するのか。大きな課題だ。LNG(液化天然ガス)火力拡大で当面をしのぎながら、長期的には東西で違う電力の周波数を統一して、全国規模で電力融通することや、電力を需要と供給の双方から調整するスマートグリッド化を進めるべきだ。

(シニアライター:内田通夫 =週刊東洋経済2011年5月28日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

写真提供:東京電力
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