早速、サブスクにあった『ラッパと娘』(作詞・作曲はもちろん服部良一)を聴き、そして歌詞を読んで驚いた。スキャット(?)がそのまま歌詞になっているのだ。
――♪誰でも好きなその歌は バドジズデジドダー
――♪ラゝゝゝゝゝ ダドジパジドドダー ドジダジ デジドダー
――♪デジデジドダー デジドダー バドダジデドダー
何なんだ「バドジズデジドダー」って。明らかにアメリカのジャズの影響を受けながらも、猿真似ではなく、肉体的にしっかり消化して、英語とも日本語とも違う動物的な新言語へと昇華しているのだ。
『ラッパと娘』を聴いて思い出したのは、サザンオールスターズのアルバム『ステレオ太陽族』(1981年)に収録された(タイトルの似た『ラッパとおじさん』ではなく、その1曲前の)『我らパープー仲間』という曲だ。
――♪持ち物までが ムケタラバズルリブー
英語とも日本語とも違う動物的新言語で25歳の桑田佳祐が歌う。エンディングでトランペットと張り合うようにシャウトしまくるあたりは、『ラッパと娘』とそっくりだ(キャブ・キャロウェイからの影響の方が大きそうだが)。
よく考えたらボーカリストとしての桑田佳祐の魅力も「地」ではなかったか。アメリカのロックンロールのとりこになりながらも、猿真似ではなく、肉体的にぐっと引き寄せて、アメリカから遠く離れた日本という「地」に向けて、ハスキーでザラザラした「地声」で、自らの「地」を歌い上げた桑田――。
言いたいことはつまり、笠置シヅ子の後継としての桑田佳祐ということだ。ということは、桑田佳祐のみならず、吉田拓郎、矢沢永吉、西城秀樹、浜田省吾、世良公則などのハスキー「地声」ロックボーカリスト(桑田佳祐以外はなぜか全員広島出身)につながる大河に向けた最初の一滴の物語として、さらには日本ロックの源流物語として『ブギウギ』を捉えることも出来よう。
大阪弁の持つリズムの魅力
大抜擢された趣里は、重いプレッシャーを背負っているかもしれないが、笠置シヅ子の魅力が「地」ならば、趣里も「地」を出していけばいいのだ。では「地」を出すとは、どういうことなのか。
桑田佳祐は、自著『ポップス歌手の耐えられない軽さ』(文藝春秋)において、笠置シヅ子『買物ブギー』を「日本の三大名曲(ポップス)」の1つに選んだうえで、大阪弁の持つリズムの魅力について、こう語っている。
――『買物ブギー』なら例えば、「わてほんまによう言わんわ」というサビのフレーズがお馴染みである。それを六つの音節に分けて、「わて・ほん・まに・ようい・わん・わ」と、流れるように音楽に乗せる事が出来る‼(ちょっと理屈っぽくてイヤだよね)
そう、「地」を出すということは、すなわち、流れるような大阪弁のリズムで歌って踊って、シャウトしまくって、視聴者にこう言わせることなのだ――「趣里ちゃん、わてほんまによう言わんわ」。
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