彼らに共通するのは、時代に対するメッセージを脚本に埋め込むのが上手いという点だ(運送業者を取り上げた『あなたの~』における「何がエッセンシャルワーカーや。雑に扱いやがって」というセリフは本当に良かった)。『ブギウギ』でも、蒼井優と翼和希の関係に、その片鱗がすでに見られる。期待したい。
そして最後に、何といっても「笠置シヅ子というモデル設定」が効いている。
天真爛漫な音楽性は、まさに大阪制作朝ドラ向き。なぜこれまで取り上げられなかったと思うくらいだ。
笠置シヅ子へのオマージュとも言える主題歌『ハッピー☆ブギ』(中納良恵・さかいゆう・趣里)も秀逸。手掛けたのは、笠置シヅ子の音楽面でのパートナーだった服部良一の孫の服部隆之。録画で見るときも飛ばさずに聴いている。
白状すれば、これまで朝ドラの録画再生時には主題歌をよく飛ばしていた。特に、ドラマの内容と無関係、取ってつけたような主題歌の場合は。対して今回はドラマの内容と見事に融和している。だから今後も多分、飛ばさない。
ヒロインのモデルとなった笠置シヅ子の魅力
さて、ヒロインのモデルとなった笠置シヅ子について。NHKドラマ・ガイド『連続テレビ小説 ブギウギ Part1』(NHK出版)において、音楽学者・音楽史研究家の輪島裕介がこう述べている。
――笠置シヅ子の魅力を漢字一文字で表すなら「地」だと思う。声楽式のベルカント唱法ではなく「地声」で歌い、大阪の「地」の言葉で話し、振り付けにとらわれず思いのままに体を動かし自分の「地」をさらけ出す。
同じく輪島裕介による『昭和ブギウギ 笠置シヅ子と服部良一のリズム音曲』(NHK出版新書)にはこうある。
――それでも、戦前にレコード発売された数曲のうち、とりわけ「ラッパと娘」の超絶的な歌と演奏は、同時代の日本のどんな録音や映像をも凌駕する爆発的な躍動感に満ちていると感じる。
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